J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』を原作とした、ファンタジー大作「ロード・オブ・ザ・リング3部作」と「ホビット3部作」のベスト作品を紹介します。
2001年から2003年まで公開されたロードオブザリングは、ゲーム世界の中にしか存在しなかった「勇者を中心とした冒険の旅の仲間」とそれに対する「悪の大王とその部下たち」との戦いを実写化して世界中で大ヒットになりました。
もともとロールプレイングゲームの元祖的な存在の「ドラゴンクエスト」シリーズが「指輪物語」をモデルにしたと言われていて、小学生時代にドラクエがヒットした自分の世代なんかが「おおおお!この世界観はまさにドラクエ!!!!」とハマりにハマったこともありまして、人気が爆発した理由の一つだとも思います。
そしてそれから十年以上たって公開された「ホビット」も、同じくトールキン原作の同名小説を実写化した作品でありまして、これも「ロード~」の感動がまだ胸に中にくすぶっていた往年のファンの「おおおおお!」な心を見事にわしづかみにしてくれたというわけですな。
どちらも指輪物語の世界観と登場人物をリアルに丁寧に描いた作品でありまして、大人が見ても見どころがたくさんある「熱きヒューマンドラマ」の一面を持っていると感じます。
今回はそんな「心が熱くなってしまう」両作品の中からとくに「熱くなった」「感動した」作品をピックアップして、それぞれの良いところや見どころ、ここはちょっとなあという思いを紹介していきたいと思いますよ!
ロード・オブ・ザ・リング&ホビット「心が熱くなる」ランキング
ロード・オブ・ザ・リング
記念すべき「指輪物語」実写版の第一作目です。
この映画には本当にしてやられました。
序盤のホビット村の美しさや、そこに訪れる魔法使いガンダルフの佇まいや話し方、魔法のような花火の素晴らしさ、ホビットたちの家のミニマムさなど、すべてが「ドラゴンクエスト」シリーズで出てきた「村」をリアルに見させてもらっている気分になったからです。
「おおおお!これだよ!こういう世界観が俺たちはずっと望んでいたんだ!」
と序盤からすっかり熱くなっていた当時を今でも思い出します。
続いて登場してくる勇者アラゴンやエルフの王子、ドワーフ族の戦士たちも、まさに「勇者のパーティー」にふさわしい、というか、もうそのまんまじゃないか!と感動でしたね。
一番「これだ!」と胸熱になったのは、オーク(エルフ族が悪魔化した)の集団が主人公の一行を追跡するシーン。
見るからに恐ろしいオークたちが集団で勇者の一団を追いかける姿を見て「こ、これが、ドラクエのゲームでパーティーを襲ってくる敵のリアルな姿か・・・!こんなのが背後に迫ってきていたら、リアルに怖いじゃないか!」と心底ビビってしまいましたよ。
自分達が気軽にプレイしていたファミコン時代のドラクエの勇者や戦士、魔法使いたちが、実はこんなとんでもない悪魔どもと頑張って戦っていたんだと思うと「なんて大変だったんだ・・・」と、押し入れの奥深くにしまい込んだゲームカセット(懐かしい!)に向かって思わず一礼してしまったほどです。
そして物語の最後の言葉にも感動しました。
たった一人で冥王サウロン(悪の親玉)の元に向かおうとする主人公のホビット、フロドに向かって「私も行きます!」と必死についていこうとする親友サムの献身。
「絶対にあなたを守ると誓ったんだ!」とフロドに語るサムの思いに「ああ、これが本当の友達なんだな・・」と深く静かに感動してしまいましたね。
ドラクエを実写版で見たような衝撃と、登場キャラたちのゲーム世界の彷彿感、主人公たちの熱く純粋な思いがビンビンに伝わってきたのが懐かしい。
影だけの王たちとか、原作を忠実に表現した不気味さも見ごたえありましたし、エルフの王女がエアロスミスのボーカルの娘さんだった驚きも併せて、色んな意味で気分をもり上げてくれたシリーズ随一の名作だと思います。
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
「ロード~」シリーズの3作目で最終作になります。
これまでの旅の物語の最後を締めくくるにふさわしい壮大な世界観と、迫力満点の映像シーンの連続に胸を熱くさせてくれました。
そして何よりも感動させてくれたのは「熱い言葉」でしたね。
ロード~シリーズには、単に映像の素晴らしさや戦いのシーンのスペクタクル感だけにとどまらない「人間ドラマ」の熱さがありるんです。
友情や愛、裏切りや憎しみ、その裏腹にある愛への渇望・・・
トールキン自身が第一次世界大戦に参戦し、そこで体験した戦場の悲惨さと人との信頼、そして愛する者との関係を物語に投影したことが、映画の中でも「熱く」描かれている感がありましてな・・
【トールキン旅のはじまり 感想】ロードオブザリングの作者の物語!
その最もたるものが、ラストシーンで人間の王アラゴンが兵士に向かって語り掛けた言葉でした。
ゴンドールとローハンの息子たち!わが兄弟たちよ!
君たちの目の中に私をも襲うだろう恐れが見える!
人の勇気がくじけ、友を見捨てる日が来るかもしれない
だがそれは今日ではない!
魔狼の時代が訪れ、盾が砕かれるかもしれない
人間の時代が終わるかもしれない
だがそれは今日ではない!
今日この時は戦う日なのだ!
かけがえのないすべてのものに懸け、踏みとどまって戦え!
西方の戦士たちよ!
これは痺れましたね。
こういう言葉を聞かされたら、そりゃあ部下は奮闘しますって。
恐怖を感じたり、負けてしまうことを真向から否定するのではなく、今はその思いを胸に隠して目の前の立ち向かうんだ、その先に未来はあるのだ、というリーダーの熱き言葉。まさに現場指揮官の最高のモデルですね。
ほかにも人間の王たちの共同戦線とか裏切りだとかの「人間模様」も見ごたえありました。
一作目で倒れたボロミアの弟とか、その親父さんとの関係とか、シェークスピアに出てきそうな親子間の葛藤とか・・・
旅の仲間だけの話で終わらずに、人間世界のどこにでもある「いざこざ」を冒険スペクタクルに織り交ぜて、物語に深みをもたせているところに「うまいなー」と感心したり。
相手を信じる心。
3作品すべてに共通しているテーマでしたし、最終作の映画でそれがより「言葉」にされて胸に熱く迫ってきたと思います。
ホビット/思いがけない冒険
ロード~から10年経過した後に製作・公開された、トールキン原作の「ホビット」シリーズ第一弾です。
物語の流れ的には、全シリーズのロード~の前日譚になります。
ロード~で主人公だったホビット族のフロドのおじさんビルボ・バギンズの若き日を描いた内容で、物語の全てのベースになる「指輪」を巡る冒険ということです。
ストーリー的には全シリーズとそれほど変わることはなく、魔法使いのガンダルフも出てきますし、エルフ族のリーダーやドワーフも健在です。
単に主人公がフロドではなくビルボになっているというだけですね。
なのでストーリ―展開や映像、バトルシーンでは前作を越える感動はありませんでした。
唯一「おおおお」と感動したのは「言葉」です。
物語の序盤から中盤での魔法使いガンダルフとビルボの会話、ガンダルフとエルフの女王との会話、ラストシーンで誇り高きドワーフの王がビルボに語るそれぞれの「言葉」には、静かに胸が震えてしまいました。
以前に書いたレビュー記事から、その部分を引用してみます。
「なぜ僕に?今まで剣なんて持ったこともないのに」
訝しげに訊ねるビルボに、ガンダルフは答えた。
「真の勇気が試されるのは命を奪うときではない。命を救うときなんじゃよ」
後にガンダルフがエルフの女王ガブリエルの元を訊ねたときにも、同じように伝えている。
「なぜホビットを選んだのですか?」
ガブリエルの問いに、ガンダルフはじっと考え、そして答えた。
「私にも分かりません。ただ偉大な力だけが悪を封じられるといいますが、私の考えはそれとは違う。大事なのは些細な事なんです。普通の人々の日々の行い。闇を追い払うのは思いやりや愛情だと・・多分、私も怖いのです。あのホビットはそんな私に勇気を与えてくれるんです」
「前に言ったな?お前は足手まといだと!生き残る術を持たない者は我々の仲間とは認めないとも!」
「・・・・・」
激しく問い詰めるオーリンに言葉を失うビルボ。
だが次の瞬間、オーリンは頭を下げた。
「だが・・全ては俺が間違っていた・・・許してくれ」
驚きながらも、笑顔を見せるビルボ。
やがてはにかみながら、オーリンの言葉に答えた。
「いいんです。確かにそのとおりです。僕は英雄でも、戦士でもないのですから・・・」
最初の2つの言葉と、最後のドワーフの王オーリンとビルボの会話は全部つながっているということ。
一見して弱弱しいホビットが実は強いハートの持ち主で、決して物事を諦めない不屈の精神を持っているということ、そしてその思いはピュアであるということ・・・
それらを言葉と行動で表現したそれぞれのシーンに、現実の世界でも同じ人間像が身近にあるのかもしれないと思わせてくれるリアルさをもっていました。
この言葉だけでこの映画は「見るべき価値あり」と思わせてくれますよ。
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ホビット/決戦のゆくえ
「ホビット」3部作の最後になります。
この作品は正直、あまり見どころがないなというのが、ラストシーンに至るまでの感想でした。
物語の流れ的には「余計かな」と思うシーンも多かったですし、キャラ設定も「必要ないだろ」と思わせるところもあったりして、どちらかというと「後付け」的な要素が多いという印象を受けました。
ただ唯一、エルフ族の王と、その部下のタウリエルとの会話や、王の息子であり、後のロード~シリーズで活躍するエルフの王子レゴラスの過去について触れる描写は「胸に熱く響いた」んですね。
エルフ族の王スランドゥィルは非常に優秀なリーダーでしたが、同時に冷酷な一面をもっていました。
一族の繁栄のみを考え、中ツ国(物語の舞台となった大陸全体の国)の平和や調和は考えずに行動する自己中心的な王。
しかし、そんな王にも、そうならざるを得ない理由があったのです。
王のモットーは「愛は必要ない」ということ。
愛によって人は弱くなる、そんな愛など邪魔以外の何物でもないというのが、スランドゥイルの生き様だったのだ。
スランドゥイルの息子でありエルフの王子であるレゴラスは、そうした父の冷血な信条に基づく行状を苦々しく思っており、さらに自分の母が死んだときのことも、詳しく父から知らされないまま育ってきたためか、父には常に不信感を抱いていた。
レゴラスの部下であるタウリエルも、常日頃から王の無情な命令や指示に不信感を抱いており、ドワーフの仲間の一人と恋に落ちて以来、王の「愛など必要ない」という信念への疑念の思いがさらに深まっていったのだった・・・
ドワーフを愛した部下のエルフの女性戦士にも「冷たい態度」を取り続けたスランドゥィル王。
しかし部下の女戦士が愛したドワーフが死んだとき、彼女が王に向かって「なぜこんなに悲しいのですか?」と叫んだとき、初めて王の隠された思いが語られていました。
「かつて私の愛した女も、戦いの最中に命を落とした。そのときも私も同じことを思ったよ。”二度と愛などいらぬ!”と・・・ゆえにお前の気持ちはよくわかる」
それを聞いて泣き崩れるタウリエル。
しばし彼女を悼むような眼差しを向けながら、やがてスランドゥイルは静かにその場を立ち去って行くのであった・・・
このくだりを取り上げた過去記事では「北斗の拳」に出てきた「聖帝サウザー」の哀しき過去と似ているな、と書いたものでした。
尊敬する師を掟に従って殺めてしまい、嘆き悲しみ「こんなに苦しいのなら、愛などいらぬ!」に心に決め、その日から修羅の道を歩んだサウザー。
愛するがゆえに「愛を失うことを恐れた」サウザーとスランドゥィル・・・
しかし一度忘れたはずの「愛」は決して消えることなく、胸の奥にくすぶり続けていたのでした。
人の思いや愛の有り様。
ゆえにこれらのシーンは、作品の中で最も心に響いたものになりました。
次の「ロード~」のレゴラスに続く物語性も匂わせるという脚本の見事さ。
このラスト付近の流れこそが、この3作目を「胸アツ!」と感じさせてくれた最大ポイントになったということですね。
両シリーズとも「2作目」を取り上げなかった理由
以上がロード~とホビットシリーズで感動した作品になりますが、ここで読者の皆さんにも疑問が残るはずです。
「あれ?どっちも2作目はないの?」
そうなんです。
ないんです
理由は簡単です。
面白くなかったから
明確な理由ですね。
もっと正確に言うと「とくに印象に残らなかった」というほうが正しいのかもしれません。
ロード~だと「二つの塔」ですし、ホビットは「竜に奪われた王国」でしたっけ?
いやもちろん、どちらも観ましたよ。映画館できちんと正規料金を支払って。
まあ面白いのは面白かったんですが、なんというかですね、
胸が熱くなる展開
とか
心を激しく揺さぶられる言葉
とか
しみじみと涙が溢れる人生の教訓
的な要素は限りなく少なかったと思うんですよね。
ほかの1や3作目はロード~もホビットも、今でもすぐに思い出せますから。
2作目で記憶にまったく残っていないということはシンプルに「印象が薄い」作品ということになるのではないでしょうか。
繰り返しますが、アクションファンタジー作品としては、どちらも普通に面白いです。
見て損をするということはないです。
ただ単純に「胸を激しく揺さぶられる感動」があまりないなあという個人的な感想であるが故の「2作目外し」となったわけですね。
まあシリーズ物の2作目は、だいたいがどの映画でも支持率は低いんですけどね。
今の話題で言うならアメリカの中間選挙みたいなもんですね!(政権与党が批判を受けやすいという意味で)
まとめ
ロード・オブ・ザ・リングとホビットのベスト作品と関連グッズの紹介、如何だったでしょうか?
両作品シリーズともに映画版はすでに製作や公開は終わっていますが、とくに「ロード~」があまりにも完成度が高かったので、これらを越えるシリーズ作品はもう出てこないと思います。
最近になってアマゾンプライムが独自制作したロード~シリーズが出てきたようですが、こちらはあまり評判が宜しくないようなので、未だに見ていませんしね。
スターウォーズシリーズのスピンオフのオビワンもそうでしたが、やっぱりいくらお金をかけても、あの当時のあの「熱さ」には到底及ばないんですよね。
時代の空気感とかそれまで見たことがない衝撃だとかの要素があってこその「伝説的な作品」になるんじゃないかなと思うわけですよ。
とはいえ、ファンとしてはやっぱり続編とかスピンオフは気になりますし、評判が良ければぜひ見たいところ。
それもできたら映画館でみる劇場版を期待したいですし、オリジナルの太祖であるピーター・ジャクソン監督に新たなロード~、ホビットに続く壮大な旅の物語製作して頂きたいと。
それまでは中つ国の地図を眺めながら、トールキン原著を読んで旅の世界観に浸っておきますよ。
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