「キングスマン ゴールデンサークル」を劇場で観に行ってきた。
前作「キングスマン」でキレキレなアクションと、今までのスパイ映画にないスタイリッシュでポップかつキャッチ―な登場人物のスタイルとBGM、英国ユーモアに溢れたプロットの連続に魅了されて以来、続編の登場を今か今かと待ちわびていたのだが、今回も激面白かった。
映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』公式サイト 大ヒット上映中!
前作以上にブラックユーモア満載でスタイリッシュ、タブーな表現も使いまくりな制限なしの「PG12」指定の大人映画に心しびれた夜。
そしてなんといっても、あの「エルトン・ジョン」!!
映画の面白さの半分以上を持っていった感のある、その圧倒的なやさぐれ感は、見るものすべてを笑いと腹筋崩壊の渦に巻き込んでしまうこと間違いなし!
これはファンならぜひ見るべき最高の作品です。
ではいきましょうか、怒涛のスパイストーリーのレビューを!
*ネタバレありまくりなので注意を
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ストーリー紹介
英国の秘密組織「キングスマン」は前作の作戦で多くの仲間を失ったが、その遺産は残されたエグジー、マーリン、ロキシーらが引き継いだ。
キングスマンの元候補生で落第したチャーリーは、麻薬組織ゴールデン・サークルの一員となり、エグジーを突け狙う。
やがてアジトを特定されたキングスマンは、ゴールデンサークルの攻撃を受けて再び多くの仲間と遺産を失った。
組織の再建と、ゴールデンサークルの目的を調べるために、生き残ったエグジーとマーリンはアメリカの秘密組織「ステイツマン」を頼る。
やがて分かったのは、ゴールデンサークルは全世界に流通する麻薬に毒を仕込んでいて、それを使ったものは死に至るように操作されているということだった。
その解毒剤を配布する代わりに、アメリカ合衆国大統領に全ての麻薬を合法化するように強迫することが目的と知ったエグジーらとステイツマンは、共同でゴールデンサークルを倒すことを決める。
エグジーが意外にハマっていた!
前作で師匠のハリー(コリン・ファース)を失ったエグジー(タロン・エガートン)は、ハリーの家や地位を受け継ぎ、そのままキングスマンの主要エージェントとして働いていたのだけど、これが意外に存在感を放っていて、ハリー亡き後の新しいガラハット(エージェント名)ととして全く遜色ない役柄を演じていたのは驚きだった。
前作ではコリン・ファースの存在感があまりにも大きくて、若きエガートンが後継者となるには役不足になるように思えたけど、今回の映画の冒頭で繰り広げられたアクションや、映画全般で見せた演技で「全然いけるな」と認識を改めさせられたのだ。
中盤でハリーが復活した後も、エグジーの存在感は増すばかりで、もし3作目で彼単体になっても悪くないと思わせるくらいにまで、成長の跡を見せたというか。
実際には脇役をハリーや演技派のマーリン(マーク・ストロング)がしっかり固めてエグジーを支えていたからなのだろうが、それでもエグジーが時折見せるふとした笑顔や表情、仕草にキングスマンの主人公としての貫禄を随所に感じるようになっていて、安心して最後までみることができた。
演じるタガーロン自身も慣れてきて自信がついたのだろうか。
ただ一つ心配なのが、彼があまりにもこの役柄にハマりすぎてしまって「エグジー」の色が定着してしまうと、その後の映画俳優としてのキャリアが危うくなってしまうのでは?と思うところだ。
スーパーマンのクリストファー・リーヴやバック・トゥ・ザ・フューチャーのマイケル・J・フォックスのように、それ以外ではパッとしないというようになってしまうと、エガートンの将来的にはどうかなと心配してしまうのだが・・
ティルデ王女が恋人役で登場!
前作ではその魅力的なお尻で全世界のキングスマンファンの目をくぎ付けにした王女だが、実は今作にはエグジーの正式な恋人役になって再登場している。
役柄は架空の国の王女ではなく、スウェーデンの王女ということになっているが、前作でもそうだったが、王女がお尻を見せたり、ア〇〇もOK!と言ったりして「マジかよ・・」と軽くドン引きした前回に負けず、今作でも麻薬を使用しているという設定になっていたりして、これって王室的には大丈夫なのかな?と鑑賞中に何度も思ったりした。
一応、国民の支持があって成立している王室なのだから、イメージというのが大切なのだと思うが、前作の下品な描写といい、首相が王室を下げる発言シーンがあったり、さらに今回は王女が麻薬使用して死にかけるというシーンを入れたりして、これはさすがにマズいんじゃない?とかなり本気で心配になった(笑)
だからか分からないけど、前作の興行収入が圧倒的にナンバーワンだったのが中国らしくて、これって、王室とかの権威を嫌う共産党の肝いりで観客動員数を伸ばしたのじゃないの?と勘ぐってしまうくらい、下げて描かれていたように思う。
北米以外の地域で最大の興行収入を記録したのは中華人民共和国の2,790万ドルだった。その他の地域では韓国が530万ドル、ロシア・CISが360万ドル、台湾が430万ドル、フランスが330万ドルとなっている。
(キングスマン-Wikipedia)
まあそれだけヨーロッパの王室は国民に開かれた存在といえるのかもしれないけど。
で、この王女役のハンナ・アルストロムさんは序盤からエグジーとラブラブで、すっかり普通の恋人同士になっているという設定。
前作の最後で「世界を救ったら私の大事な〇〇〇をあげる」とエグジーを自室に誘った後に、そのまま付き合うことになったのか。なんて軽い王女だ(笑)
3年前にアップした「キングスマン」のレビューでも、この王女のことについて詳しく調べた内容を書いたのだが、これがえらくアクセス数を獲得し続けていて、当時に書いてたソネットブログ時代から、このはてなに移ってからも未だに安定したアクセスを確保している記事になっているという、王女のお尻効果。
劇場公開が始まったことも関係あるだろうが、今もってこの記事だけに検索流入で結構なアクセスが集まっているのだから、みんな好きなんだな、お尻のことが、と嬉しくなりました(笑)
マーリンのジョークが光る!
前作から引き続き登場しているマーリン(マーク・ストロング)だが、今回も変わらずエグジーの補佐役として活躍している。
この人は一見して寡黙でタフガイに見えるのだが、こういう人がジョークを言うと、普通の人以上に面白く感じるから、ある意味得だ。
このゴールデン・サークルでも序盤から飛ばしていて、敵の攻撃で本部や仲間をすべて失って落ち込むエグジーに対し「今は泣いてる場合じゃない。
まずは状況を立て直すことが大切だ。
泣くのは全てが終わってからにしろ」とビシッと伝えて、エグジーをはっ!とさせた後に、地下のアジトで酒を飲み始めると自分が真っ先に泣き出して「俺が悪かったんだ~許してくれ~」とエグジーに縋ったり、最後のシーンで地雷を踏んでしまい、敵を引き付けるためにバリトンボイスで「カントリーロード」を朗々と歌い上げるところとか(これがまたいい声なんだ)、随所随所でクスッとくる笑いを提供してくれていて、こういう役者さんがいると、本当に映画ってのは締まるなあと感心してしまう。
文字で書いてしまうとイマイチ面白さが伝わりにくい描写だし、空気感とか表情で魅せる俳優さんなので、マーリンのジョークを観たい人は、ぜひとも劇場に足をお運びください。
*マーリンの熱唱についてレビューしてみました
⇒『キングスマン:ゴールデンサークル』でマーリンが歌う「カントリーロード」は最高だ!!
ハリー復活!だが今回はイマイチか?
前作でヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)に頭部を撃ち抜かれて死亡したと思われていたハリー(コリン・ファース)だったが、実はその後にステイツマンに助けられて一命を取り留めていた。
銃撃の後遺症で記憶喪失になってしまうも、エグジーの機転の利いた方法で元のハリーに戻るのだが、長らく体を動かしていなかったために、作戦では失敗を連発。
時々蝶々が飛んでいる幻覚を見てしまう描写もあって、全体的に目立たない演技が多い印象だった。
もちろん終盤では勘を取り戻してエグジーの命を救ったり、敵のボスと渡り合ったりして、動きはすごくメリハリを取り戻していたが、以前ほどは華やかさがない感じに見えたな。
あくまで主役はエグジーだから、彼を際立たせるための演出だとは思うのだが、終始寡黙だったし、アクションも見どころはすごくあっても、いまいち「ハリーここにあり!」とはならなかったのが残念。
やはり年か?ハリーよ?
でもやっぱりキングスマンシリーズにはなくてはならない役柄だから、ぜひとも3作目も出演してほしいと願うところだ。
ステイツマンvsキングスマン
南部訛りを話すアメリカ秘密組織「ステイツマン」のメンバーには、現場エージェントのテキーラ(チャニング・テイタム)、ウィスキー(ペドロ・パスカル)をはじめ、後方支援要員のジンジャー(ハル・ベリー)、ボスのシャンパン(ジェフ・ブリッジス)など、個性豊かな面々がいた。
なぜかアジトはバーボン・ウィスキーの醸造所で、ビルはウィスキーの瓶の形という(笑)
しかもメンバー全員が酒の名前で「お前らはドラゴンボールのキャラか」と突っ込みたくなるほど、監督のおふざけが良く出ているのがこのへんの描写だ。
キャラの比較としては、
エグジーvsテキーラ
ハリーvsウィスキー
マーリンvsジンジャー
という感じになっていて、どちらも英国とアメリカの文化的スタイルが象徴されてて面白かった。
たとえばエグジーとハリーは、英国仕立てのパリッとしたスーツを着て英国英語を話し、かたやテキーラとウィスキーは西部劇に出てくるようなカウボーイスタイルで南部訛りの英語という、それぞれにステレオタイプな英国人とアメリカ人のスタイル。
武器もキングスマンが傘やスーツケースというビジネスマンスタイルで、ステイツマンの面々は投げ縄を使ったりと、戦闘ソーンにも特徴が出ていて見ごたえがあった。
マーリンとジンジャーに関しては、マーリンは英国風だが、ジンジャーは女性であるハル・ベリーが演じているので、あまり比較にならなかったが。(しかも普通に優秀な後方支援要員というだけの演技だった)
で、そんなステイツマンが潰れかけのキングスマンを援助して、ゴールデンサークルを追い詰める手助けをしてくれるのだけど、実はこのうちのウィスキーが私怨から「ゴールデンサークルの企てに乗ったように見せかけて、世界中の麻薬中毒患者を全滅させる」大統領の作戦を支持して、土壇場でエグジーらを裏切るというドンでん返しに至るのだ。
ウィスキーは妻が麻薬中毒者に殺された過去があって、そのために大統領の隠れた意図に気づいてそれを後押しするのだけど、それはそれで納得できたし、そのままいけばいいじゃないかと思ったが・・
そこはやはり大衆に向けた映画で、やっぱり「人の命はたとえ麻薬中毒者でも大切だ」という大向けの大義が勝つという流れになり、結局はエグジー&ハリーが裏切り者ウィスキーと敵ボスを倒してジ・エンド。
その後はステイツマンの支援を得て、キングスマンは見事復活を遂げるという終焉を迎えるのだ。
ここからは少し余談になるが、このキングスマンとステイツマンの関係を見ていると、第二次世界大戦当時のイギリスとアメリカの関係を思い出す。
当時の大英帝国は、それまで世界の七つの海を支配する一大帝国だったが、ヨーロッパ大陸を支配したナチスドイツの猛攻にさらされていた。
海を隔てていたので、陸軍国でもあったドイツの攻撃はなんとか凌いでいたが、それでも時間の問題で、度重なるドイツ空軍の空爆によってロンドンは壊滅状態にあった。
こうした状況から自国を防衛するために、アメリカの支援を喉から手が出るほど欲しかった大英帝国首相チャーチルは(当時のアメリカは他国の戦争に手を出さないという政策を貫いていた)、大西洋にあった自国領の権益を米国に譲り渡すという賭けにでる。
この賭けは見事に的中し、アメリカはイギリスを支援することを秘かに決定、さらに太平洋でハワイを日本軍に攻撃されることで、日本と同盟を結んでいたドイツを攻撃する大義を国民に向けて獲得し、正式にヨーロッパ戦線に参加することなった。
結果、大戦力をもつアメリカの参戦によってナチスドイツは敗れ、見事チャーチルの願ったアメリカの支援によるイギリス防衛はなったのだ。
同時に大西洋の支配権は米国に移ることになり、世界に冠たる大英帝国崩壊の直接のきっかけになったとされるのだが・・・
映画でもキングスマン(大英帝国)がステイツマン(アメリカ)の支援を受けて復興を遂げるという設定が、そんな両国の歴史的経緯を意識させてくれるようで、歴史好きとしてはなかなか趣のある描写だった。
監督がそういう歴史的な出来事を意識して描いていたとすると、かなり皮肉の効いた作品作りになるのだけど。
最後はチャニング・テイタムがスーツを着てロンドンのキングスマンの本拠を訪ねるシーンで映画は終わるが、これって続編がこの続きで始まるという示唆なのだろうか?(チャニング・テイタムがほとんど麻薬の治療で寝ていたのが、意味不明だった)
あまりパッとしなかった「ゴールデン・サークル」
キングスマンとステイツマンがそれなりにキャラ立ちして面白かったのに対して、今回の悪役のゴールデン・サークルはイマイチぬるかった・・というのが正直な感想だ。
だいたい世界を牛耳るのが麻薬王という設定自体が使い古されたものだし、商品の麻薬を使って策を施す目的が「麻薬を合法化すること」なのだから、世界的なネットワークと巨大資金を持つ一大シンジケートの狙いとしてはなんともチンケなレベルだ。
それならまだ前作のヴァレンタインのほうが、IT長者で、自社のSIMカードを使って世界中の人間を洗脳し、最後は必要な人間だけ生かして地上の楽園を作る、という目的のほうが規模がデカくていかにも狂信者という感じがして見ごたえがあった。
ハーバード大学院を中退した超優秀な頭脳を持つ女ボスという設定そのものは悪くなかったのだが、まったくアジトから出ずにひたすら部下を使って作戦を実行させていたあたりも、悪の組織としての映画の設定としては魅力がないものに感じてしまったな。
ジュリアン・ムーアという配役もイマイチだなと思ったし、彼女が行う残酷な処刑も、映画の描写が始めから漫画チックなものだから、リアリティに欠けるし・・・
まあそのへんはキングスマンテイストということで許せるか。
もはや今回の悪役の軸は、前作でキングスマン候補生を落第して落ちぶれたチャールズという元貴族の青年になっていて、肉体改造を施された「ターミネーター」チャールズが最後にエグジーと宿命の対決を果たすあたりで映画のクライマックスに達していた。
それでもチャールズが画面を引っ張る悪役としての魅力に満ちていたかというと、、まったくそんなことはなく、むしろ間抜けな噛ませ犬としてひたすらエグジーにいじられた役というのが、素直な感想だ。
そうなれば、ゴールデン・サークルの意味はどこにあるのか?ということになるが、実はそこに意図的に隠された重大な秘密があったのである。
ジュリアン・ムーア演じるポピーやチャールズの肉体改造、そして組織の麻薬を使った野望の数々は、ある一人の男を際立たせるための壮大な前説に過ぎなかった・・・
ジュリアン・ムーア演じるアルツハイマー病にかかった教授の感動ストーリーです
そしてエルトン・ジョン降臨(ここ壮大にネタバレです)
もうこの人に尽きる。
全てのキャラを吹き飛ばすほどの圧倒的破壊的破滅的迫力でスクリーンの前の私の目をくぎ付けにしまくった稀代のエンターテイナー。
全アルバム・シングルのセールス3億枚以上、世界で最も売れたアーティストでビートルズ、エルヴィス・プレスリー、マイケル・ジャクソン、マドンナに次ぐ第5位の偉大なる快挙を誇る、栄光のシンガーソングライター。
英国女王の即位記念パーティーで女王のために歌い上げ、亡きダイアナ元皇太子妃のために追悼歌「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」をリメイクして書き上げるほどに英国王室と関係が深く、さらに英国を代表する偉大なるロックバンド、クィーンのフレディ・マーキュリーの追悼のためにライブを開くなど、英国の伝統文化と音楽文化に偉大なる足跡を残した生きる伝説の人。
そんなワン・オブ・ザ・モスト・ワールド・タレンテッド・スーパーグレイト・ミュージシャンが、ついにこのキングスマンに姿を現した・・・
破壊的な笑いを提供しながら
だってあの天下のエルトン・ジョンがですよ。
麻薬組織のボスに誘拐されて無理やりステージに歌わされようとするときに、いきなり「てめえこの野郎!」と口汚く罵るのですよ?
だってあの英国文化を代表するエルトン・ジョンがですよ。
麻薬を使っていることがボスにバレて(ボスは身内が商品に手を付けることを大変嫌う)、後で大統領を脅すときのテレビ映像に「私の言う通りにすれば解毒剤を注射して症状は治まるわ」のサンプル実験体として出演させられたシーンで「何映してんだてめえこの野郎!お前も俺の部屋からさっさと早く出ていけこのクソ野郎(医者に向かって)!!」と怒鳴りあげるのですから。
まるで「ガキの使いやあらへんで」で超有名俳優・女優が出てきて同じようなことをして笑いを誘うのと同じレベルの現象。
そして最後の戦闘ソーンが秀逸すぎる。
エグジーとハリーが敵の本拠でボスを追い詰めている最中、その横にある劇場で部下に無理やり歌わされているときに、銃撃戦が聞こえたので「僕を救いに来たの?」と気づき、いきなりピアノを弾く手を止めて、部下に襲い掛かるシーン。
逃げ回る部下に向かって、ド派手なプリシラみたいな衣装と踵が異常に高い70年代に流行った靴を履いたままのエルトンが(なぜか)飛びあがって蹴りをかまそうとする瞬間に画面が静止して、そこでエルトンがスクリーンのこちら側に向かって「ニヤー」と笑いかけるシーン。
大爆笑でした
すいません、周りのお客さん。
あまりにもツボだったものですから。
だけどこれ、エルトン・ジョンという偉大なる歌手を知らない人が見たら、単に変ちくりんな恰好をした太ったおっさんが、面白い動きをして笑かすな~くらいのレベルに陥っていると思う。
しかも劇場で観に来ていた客のほとんどは若い世代の人だったから、エルトン・ジョンそのものを知らない年齢だろうし、よほど洋楽に詳しくないと、たぶん面白さの本当の意味が理解できない人が多かっただろうなあと。
この現象は昔見た「スクール・オブ・ロック」や「トロピック・サンダー」につながるものがあって、オリジナルのアーティストや作品を知らなければ、単に映像の動きにつられて笑うだけみたいになってしまう感じ。
なので、ぜひエルトンを知らない世代のファンは、この作品を見た後でグレイテスト・ヒッツを買って聞くべきなのだ。
心に響く曲と歌詞、ときに体を揺さぶってしまう縦ノリのロックに酔いしれるべしと。
偉大なるシンガーソングライターの足跡を体で感じて心震わすべしと。
そののちに再び劇場でエルトンの出演シーンを見て
ギャハハハ!
と腹を抱えて笑って欲しいと、若人よ、おっさんは心から願っている。
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タブーとされる習慣や文化へのあくなき挑戦
こう書くと恰好よいけど、イギリスには昔からそういう伝統があるのだ。
モンティ・パイソンなんか代表的なものだし、英国映画に多く見られるブラック・ユーモアや権威権力に対するアンチテーゼを込めた描写なんかも、その伝統の一つにすぎない。
音楽史でも、従来の権威に対する反抗的な意味合いのあった「ビートルズ」や「セックス・ピストルズ」「ローリング・ストーンズ」なんか英国発祥だから、カントリーミュージックが根強く人気を誇るアメリカに比べても、よほど革新的な息吹が英国文化には根付いているのだと思う。
逆にいえば、それだけ階層社会が牢個で抜きがたく存在していて、それに対する庶民のストレス発散としての役割を、そうした庶民文化が担っている部分もあるだろうし、そこまでしても決して従来の権力・権威層は崩れないという前提があるからこそ、こういう文化が大きく認められるとも思う。
もともと権威の象徴である王室自体が日本と違って、剣と馬を使って武力で国を統治した人たちの末裔だから(日本の皇室は神社の総元締めという形で、むしろローマ法王と立場が似ていると思う)、一般国民の文化的な範疇にまでその「権威」は及ばないのだろうし、及ばそうとも思わないのだろう。
もしこれが法王がらみのブラックユーモアを描いていたなら、こんなにスルーされなかったような気がするし、かなりの問題作として公開すら不可能な状態に追い込まれていたような想像すらできてしまう。(それだけ信仰というのは、人の心に深く根差すものだし、それを否定されたり、茶化されたりすれば、信じるものは強く反発するものなのだ)
そんな感じで今回のキングスマンも、前作に引き続き、決してハリウッドのメジャー作品では描かれないような「タブー」を英国伝統の激しく揶揄した表現で描いている部分があって、非常に面白かった。
たとえば、庶民出身のエグジーの彼女がスウェーデンの王女だったり(最後は結婚式まで上げる!)、その彼女が麻薬を使ってたりとか、元貴族階級でキングスマン候補生だった裏切り者チャールズが、新しいボスのポピーとお茶を飲んでいるときに「砂糖はいかが?麻薬の何倍も常習性のある砂糖は?」とボスに軽く嫌味を言われたり、そのままボスが「麻薬の何倍もの致死量を持つ酒や煙草が許されて麻薬が許されないのはおかしい」とか熱く語るシーンとかは、前作でヴァレンタインが「地球環境にとって人類は多すぎるし、許容範囲を超えているから調節すべきだ」と語ったように、実はそれなりに筋が通っているような発言が多々あって、これがけっこう自分の胸に響いたことは確か。
スターウォーズ流にいえば「ダークサイド」的な物の見方過ぎるのだろうが(笑)、ある意味、見方をかえれば「そうかもな」と頷いてしまいかねないセリフの数々に、自分の心はパルパティーンにそそのかされたアナキン・スカイウォーカーのように動揺してしまったのですな(笑)
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それでいて冒頭に人間をミンチにかける残酷なシーンを見せたり(漫画的に描いているので、見ていて不快には感じないが)、投げ縄で胴体を真っ二つにしたりする戦闘シーンとか、敵の動きを察知するために、エグジーが敵の恋人役の女性を誘惑して、発信器付きのコンドームを人差し指の先につけてパンティーの中に滑り込ませていくシーンとか(完全にアダルトビデオの描写だった)、単純に「これ子供には見せられんな」というシーンも前作から引き続き満載であって、このへんも放送コードが強すぎるハリウッドに対する強烈なアンチテーゼな感じで「表現の自由っていうのは、こういうことなんだよ!」という姿勢を強烈に打ち出している痛快さが見ていて非常に小気味良かった、という実感。
まとめ
前作に負けず劣らず面白さとキレキレ感が半端なかった「キングスマン:ゴールデンサークル」。
たいていの続編は、ただ単に規模が大きくだったけの駄作が多い中、このキングスマンは、ファンが望む期待通りのアクションやユーモア、キャラクターの深堀を実現してくれていて、本当に2時間21分という長尺がアッという間に感じたほどに面白かった。
ラストシーンが続編への期待を描いているように、実際に監督は3作目への準備を始めているようだ。
さらにスピンオフ作品もあるということで、これはかなり楽しみな展開。
スターウォーズの続編がハリウッド的な「家族向け」の縛りにあったせいで、私を含めた多くの「大人」が「面白くない」「子供向け対応すぎる」と感じる作品に陥りつつある今、このキングスマンこそが「大人が笑って楽しめる」新たなスパイアクションものとして、今後の「オトナ」映画界を背負っていくのでは?
続編でも変わらぬエグジーとハリーの復活を、マーリンの生還を、そしてエルトンに負けないハイレベルな誰かのキレキレ演技を心から願っています。
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