2019年2月に発表された日本の箏パフォーマンス集団TRiECHOESが世界的ポップススター、エド・シーランの大ヒット曲「シェイプ・オブ・ユー」をカバーした動画が海外で人気を得ています。
エド・シーランといえば、本国イギリスだけでなく全世界で人気のミュージシャンで、出す曲のほとんどすべてがヒットしているほどの実力派。そんなシーランの曲が日本伝統の楽器で生まれ変わるというのですから、これはすごいぞと。
日本の伝統楽器である箏とEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の融合。
日本文化の「調和」のマインドを象徴しているからか、動画公開から一年以上経った今でも動画のコメント欄は絶賛の嵐になっています。
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シェイプ・オブ・ユーの箏 with EDMバージョン
序盤は静かな箏の調べでいかにも日本的なのですが、中盤以降からはノリのいいEDMサウンドに合わせるように箏の流れるような調べが絶妙に心のひだにガンガン響いてきます。
桜色の艶やかな着物姿の女性の箏奏者と、サイドを固める和服姿の男性箏奏者と謎の狐面のプレーヤー。
着物を頭からかぶった狐面プレーヤーを見て、鳥山明の漫画「ドクタースランプアラレちゃん」に出てくる「ねじしきくん」を思い出したのは私だけではないはずです。
この狐プレーヤーがバックのエレクトロドラムの音に合わせて箏の弦と本体を叩き奏でる姿はかなりカッコいい。
シーンごとに女性が着物姿から黒装束に着替えてるのもインパクトがありますし、ゴージャスな和デザインの襖に囲まれた畳の間で3人が向かい合わせでの箏のセッションも目と耳にも心地よすぎます。
カメラのカットも絶妙で、キレのいいカット割りが音楽の良さをさらに高みに上げている感じ。
何よりも音楽とビジュアルが西洋と日本の融合という雰囲気がすごく良く出ていて、箏の優しい音色がここまでリズミカルに表現できている素晴らしさに「久しぶりに鳥肌が立ちました」。
新曲も発表されていた!
今年(2020年)の3月に新曲「Wake me up」の動画が公開されています。
雪の中を笠をかぶった僧侶風の男が歩いていく映画風の序盤から、お決まりのバンドのロゴ。
雪の中、晴れた海岸、桜舞う海辺、最後は箏とピアノのセッションで終わる、軽やかな一連のサウンドと描写。
美しくもリズミカルで優しい箏とEDMサウンドは前作と変わらず素晴らしいものがありましたが、動画は終始、海岸で統一されていて「なぜなんだろう?」と不思議に思っていたら、動画のコメントで東日本大震災のことが書かれていたので納得しました。
この動画が発表されたのが3月7日で、東日本大震災が3月11日。
追悼の意味を込めて捧げられた曲なんですね。
最後のシーンは津波に襲われた海辺の町が復興しているという意味を込めているのだと思います。
同時に「おおお」と思ったのが、エンドロールの出演者の名前に「M-FOX」とあったところ。
FOXは狐の意味だから、あの狐面の箏奏者の名前はそうなのか!と
途中で黒い着物から白い今風のパーカーに変えてた後ろ姿が見えたので、顔が見えるかなと期待しましたが、やっぱり仮面つけたままだったので少しがっかりしました(笑)
琴と箏の違い
そんなエクセレントな3人の奏でる楽器は「箏」。
実は最初に記事を書いたときは「琴」と思い切り表記してしまいました。
でもよく調べてみると彼らの使っている楽器は「箏」と呼ばれるもののようで、琴とは少し違うと思ったことが判明。
その違いを以下にまとめてみました。
【概要】
箏は柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節するのに対し、琴は柱が無く、弦を押さえる場所で音程を決める。
【歴史】
琴は日本古来からある楽器。弥生時代の遺跡からも発掘されている
箏は奈良時代に中国から渡ってきたもの
【見分け方のポイント】
琴⇒柱がない
箏⇒柱がある
*柱⇒楽器の真ん中にいくつも経っているブリッジ。箏はここで音を調節する。琴は弦を抑える指のポジションで音を調節する。ギターのようなイメージ。
参照サイト:「箏」wikipedia、「箏と琴の違いって何?」和楽器メディア、「͡コトって琴?箏?」宮西希オフィシャルサイト
もともと古代の日本(源氏物語の時代)では弦楽器のことを「琴」を総称で呼んでいたようです。
そのうち箏が有名になってきて、これが今の琴のイメージにつながっているとか。
日本文化らしく海外の文物をアレンジして和風に仕立て上げてしまうところは、この琴にも箏にもよく表れていますよね!
まとめ
エド・シーランの原曲がもはやどんなものなのか忘れてしまうほどに、箏集団とEDMサウンドが新たなバージョンに変化させていた「シェイプ・オブ・ユー」。
最後は琴と箏の楽器の違いにまで話は発展しましたが、音楽と動画の素晴らしさは一点の曇りもないです。
もう一つの「wake me up」は震災の追悼の意味を込めて作られたと思うのですが、バンドの公式ツイッターでは「1年の歳月をかけて、2作目が完成しました。 是非ご覧ください。 “Winter Always Turns to Spring“」と紹介されていて、貼られた動画はyoutubeの公式チャンネルで公開されているバージョンと少し違っています。
1年の歳月をかけて、2作目が完成しました。
是非ご覧ください。“Winter Always Turns to Spring“https://t.co/4AHsc3529S pic.twitter.com/iRyangSXu7
— Sarai from TRiECHOES (@sarai_triechoes) March 7, 2020
動画の描写が少し違う理由は分かりません。
ツイッターで公開されたものは、ひょっとしたらメンバーの震災への思いが特別に込められたバージョンなのかもしれないですね。
そんなTRiECHOESのバンドの経歴やメンバーの紹介など、ほとんど分かっていない状態なのが不思議です。
実験的なプロジェクトメンバーなのか、昔から組んでいるバンドなのかは分かりませんが、去年に突然現れたということは、東京オリンピックを視野に入れたメンバーの可能性もありますね。
できれば本格的に活動してほしいですし、ライブがあればぜひ観に行きたいと思いますよ。和楽器最高!
英国チャートを独走中!エド・シーランってどんなすごいアーティストなんだ?
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