NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」で使われているジャズの名ナンバー「サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を改めて聞いてみました。
昔から曲だけはちょこっと耳にしたことは会ったのですが、ドラマの影響でちゃんと聞きこんだのは今回が初めてです。
ズバリその感想は「穏やかな陽だまりの下でゆっくりと散歩している」イメージのような曲でした。
まさにタイトルの「明るい表通りの下で」そのままの曲調ですね。
今回はそんな名曲についてのより詳しいレビューと、曲にまつわる関連情報をお伝えしたいと思います。
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ジャズ界の巨人たちに愛されてきたナンバー
まずは曲についての概要を箇条書きでまとめてみます。
・1930年にアメリカの作曲家ジミー・マクヒューと作詞家ドロシー・フィールズによって書かれた
・ブロードウェイミュージカルのインターナショナル・レビューで紹介され、世の中に知られるようになった
・ジャズスタンダードとして、数多くの名ジャズミュージシャンに演奏されるようになる
ジャズ系⇒ルイアームストロング、ナットキングコールトリオ、デイブブルーベック、アールハインズ、ベニーグッドマン、ライオネルハンプトン、エロルガーナー、ディジーガレスピー、アートテイタム、ジェームスブッカー、カウントベイシー、レスターヤングなど
シンガー系⇒フランク・シナトラ、ウィリー・ネルソン、ジョン・バティステ、ロッド・スチュワート、ストーム・ゴードン
・映画音楽としては、1991年の映画「JFK 」、1995年の映画「花嫁のパパ2」、テレビドラマ「シットコム」のフレイジャーのエピソード 、ノーザンエクスポージャーの第4シーズンの第4話シリーズで取り上げられている(1992年)
1930年に作られたということで、戦前からの曲になるんですよね。
朝ドラでもそうでしたが、今聞いても全然普通に「良いな」と思える曲を、すでに今から100年近く前(現在は2022年ですよ!)に作っていたということで、いかにアメリカという国の文化が豊かであるかということが分かりますよね。
また文化というのは、様々なルーツだったり歴史が混ざり合って醸成されていくものなので、その意味でもアメリカという国が新しいカルチャーを生み出すのに適している国だということが分かると思います。
そう考えると、私の好きなロックもブラックミュージックと白人の音楽や文化が結びついて出来たものですしね。
そんな名曲「サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」は、歌詞も穏やかで前向きな幸せな内容になっています。
私の意訳になりますが、以下に簡単にまとめてみますね。
今まで独りぼっちだったけど
君に会えたおかげで、人生は一変したよ
コートを着て、帽子をかぶって、心配事は玄関に置いてけばいいって
まずは歩き出そうって、陽のあたる道をね
今まで日の当たらない道を歩いてきたんだ
だけどもう心配はしてないよ
無一文になったって、気分はロックフェラーなのさ
陽の当たる道を歩いていれば
なんというか、すごく元気づけられる歌なんですよね。
たぶん現実は変わらないんだろうけど、誰かの存在だったり、その人の一言で、人生は明るくなるんだって。
決して「頑張れ!」的な無理強いな歌詞じゃなくて、「人生辛いことだらけだろうけど、陽の当たる道を歩いていれば、きっといつか良いこともあるよ」という感じで、そっと優しく背中を押してくれる雰囲気がいいんですよね。
人生で何となくうまくいっていない人や、社会的に恵まれない人にとって、この歌は少しだけでも気分を上向きにさせてくれるというか。
坂本九さんの「上を向いて歩こう」と同じように「ゆったり」としたポジティブなマインドを感じますよね。
曲もゆったりしていて、それがまたこの歌の優しいポジティブさを推してくれていると思います。
だからこそ朝ドラのテーマに選ばれたんでしょうね。
ルイ・アームストロングについてちょっと紹介
そんな「サニー:サイド・オブ・ザ・ストリート」の名プレイヤーとして世界に名を轟かせてきたルイ・アームストロングについて、またここで少しばかり紹介させてもらおうと思います。
【人生】
・1901年にアメリカのルイジアナ州ニューオリンズで生まれる
・少年時代にブラスバンドでコルネットを演奏したことで、楽器に目覚める
・1923年にシカゴに移り、キング・オリヴァーの楽団に加入したのを皮切りに、レコーディング活動や他の楽団への加入などを経て、自身のバンドを結成する
・1932年にビクター専属となり、以降「バラ色の人生」「キッス・オブ・ファイア」「ハロー・ドーリー」「この素晴らしき世界」など大ヒット曲を飛ばして、一躍アメリカを代表するジャズミュージシャンの一人になる
・結婚は4回
・実子がなかったため、少年時代の怪我で知的障害のあった従弟の息子を養子に迎える(一生の面倒をみたという)
【音楽的な特徴】
・明朗な性格と高い音楽的技術をあわせ持つカリスマ的かつ独創的な演奏者
・天才的なトランペット奏者として知られる
・歌手としての実力も高い
・スキャットの手法を広めたことでも有名
トランペットについてはそこまで詳しくないので、アームストロング氏の実力がどれほどすごいのか把握できないのですが、歌に関しては「のどから絞り出すようにして歌い上げる、独特の味のある低音が魅力だな」と感じています。
あと「スキャット」と呼ばれる「歌の即興」も評価が高く、「ダバダバ」「ドゥビドゥビ」などの意味のない音をまるで楽器の音のように歌うスタイルは、確かにこの人の低く奥行きのある声から繰り出されると、それだけで「サックス」「トランペット」のサウンドを聞いているような気にさせられますね。
*ちなみに日本ロック界のスキャットといえば人間椅子の「無情のスキャット」が有名です。
そしてルイ・アームストロングのあだ名の「サッチモ」。
これはまさにNHK朝ドラの「カムカム・エブリバディ」で主演を演じるヒロイン「るい」のあだ名にもなっています。
るい(深津絵里)と恋に落ちるトランペット奏者の月錠一郎(オダギリジョー)がつけたあだ名で、アームストロングを敬愛しているミュージシャンならではの選択ですよね。
ちなみに「るい」という名前も、彼女のお父さんがルイ・アームストロングの曲が好きだったことでつけられています。
まさにジャズに彩られた人生ですよね!
ドラマのヒロインの人生を明るく照らす「サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」
冒頭にも書きましたが、もともとこの曲を改めて聞き直す気になったのは、NHKの連続ドラマ「カムカム・エブリバディ」でテーマとして使われていたことがきっかけです。
ジャズと英語好きのお父さんと、和菓子屋の娘さんだったお母さんが出会い、結婚して生まれた「るい」。
「るい」はお父さんが戦死したことで母親に育てられ、最後は色々あってお母さんはアメリカ人と再婚してアメリカに旅立ってしまいます。
るいは一人置かれてしまい、叔父の家で育てられたという悲しい過去を持っているんです。
そんな複雑な過去をもった彼女の人生は、まさに歌の歌詞にある「陽のあたらない道を歩いてきた」人生でした。
でもトランぺッターの錠一郎と出会ったことで、それが一変します。
今まで独りぼっちだったけど
あなたが教えてくれたおかげで、人生は一変したわ
コートを着て、帽子をかぶって、心配事は玄関に置いてけばいいって
まずは歩き出そうって、陽のあたる道を
今の段階ではるいが錠一郎と本当に結婚して子供まで生むのかは分かりませんが、次のヒロインがるいの娘ということは分かっているので、きっと誰かと結ばれて新しい命を得るのでしょうね。
そしてそれは彼女が「陽のあたる道」を歩き始めたという何よりの証拠・・・
人生は色々あるけれども、人との出会いで大きく変わることもあります。
このドラマはそういうことが伝えたくて作られたのだと思いますし、そのテーマの題材にルイ・アームストロングの歌が使われたのも、今のこの世の中で生きずらく思っている人に向けての「エール」の意味もあるのだと思います。
「まずは歩き出そうよ、陽のあたる道を」
そう思って、これからの人生を歩んで行きたいですね。
そのときの心の支えにこの曲を聞いていければなと思います。
「サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」の歌詞で英語学習!
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