ラグビー元日本代表ヘッドコーチによる「成功するための心構え」を説いた本です。
エディ氏といえば、2015年のラグビーW杯で弱小だった日本を南アフリカに勝つまでに成長させた名将。
今回のW杯でもイングランドを見事に準優勝にまで導きましたね。
そんな名指導者が綴る著書が「役に立たない」はずはありません。
というか、そんなつもりで買いました(笑)
実際に読んでみて、ラグビーという過酷なスポーツの指導者として名声を得たエディ氏の「熱い教えの数々」が自分の中にガンガン響いたという激アツな事実。
チームを勝利に導く思考法。
部下の力を引き出す指導法。
人生をよりよく過ごすためのマインドセット(心構え)。
ビジネスはもちろん、個人の生き方にも良い影響を与えるだろう言葉の数々が詰まっていました。
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エディ氏の「ハードワーク」を読んで心に刺さった名言
目標を明確に、大きなものを掲げよ
エディ氏は、それまで日本チームの中に蔓延していた「どうせ勝てない」というマインドを変えさせたといいます。
「世界のトップ10に入る、ワールドカップで勝利する」という、当時の日本チームでは不可能と思えることを目標に掲げたのです。
手が届きそうなことを目標にすることではなく、大きな目標を掲げること。
そうすることで「眠っている力を呼び起こす」ことができるということ。
とんでもない目標を可能にするならば、100%以上の努力を捧げなければいけない。
努力を緩めることができない分、目標は具体的に明確にする必要がある。
それは同時にモチベーションの保たせ方にもつながるのでしょう。
潜在意識を活用せよ
エディ氏が日本チームを指導するときに大切にしたのが「ジャパン・ウェイ(日本人らしさ)」。
日本人の良さを活かした「戦略・戦術・心構え」で勝利を掴むということです。
その方法を言葉に頼って選手に教え込むよりも、シンボルを利用して無意識にすりこむ方法をエディ氏はとったのでした。
それが2015年の日本代表チームのシンボルマークに現れています。
「サムライ」「忍者」などの文字デザインが入っていて、それぞれに「サムライの鋭い観察眼」「忍者の敏捷性のある動き」がメッセージとして込められているのです。
選手たちがそれを目にするたびに、無意識のうちに上に挙げたようなメッセージが心の中に浸透していくという便利さ。
シンボルマークの効用を活用した、まさにマインドセットの代表的な方法の一つですね。
言葉を繰り返すことの効用
エディ氏が監督に就任した時、チーム編成などが批判されたといいます。
そのときにエディ氏はメディアを通じて「ジャパン・ウェイ(日本人らしさ)」の大切さを繰り返してきました。
それは世間に対してというよりも、選手がそれを見て「ジャパン・ウェイ 」を実践することを期待したのです。
先ほどの「シンボルで無意識のうちにメッセージを刷り込む」方法と共通していますね。
エディ氏は言葉でこれを実践するとき、同じ言葉を繰り返さないように心がけたといいます(選手が飽きて聞かなくなるから)
そのときに好んだのが「ビジネス書」。
ビジネス書は多くがほとんど同じ内容です。
ただそれぞれに使われている表現方法が違う。
それを学ぶためにビジネス書をよく読んだようです。
「同じ言葉を繰り返していれば、部下はそれを信じるようになる」
エディ氏のマインドセット論の核といえる部分かもしれませんね。
欠点は単なる条件の一つ
国際スポーツにおいて、日本人の体格が比較的に小柄なのは確かに事実です。
スポーツでは体格が小さいことは多くの場合は不利に働きます。
サッカーでもゴール前の競り合いだったり、ラグビーでもラインアウトにそれが顕著に出てきます。
それを自覚したうえで、そこからどうやってチーム全体として強化していくのか。
それを実践したのが女子サッカーの佐々木さんであったㇼ、著書のエディ氏だったりします。
佐々木氏も「きめ細やかな素早いパス回しで、ゴール前の競り合いを避ける」、エディ氏は「全てのプレーを低い位置で行う」ことに重点を置いたといいます。
そのために格闘技選手からタックルのコーチを受けたりと、さまざまな視点と方法で「ジャパン・ウェイ」を実践した結果、大きな成果を得たのです。
欠点をネガティブに捉えないこと。
それはただの条件であり、それを補うために徹底的に考え抜いて、勝利の方法を編み出すことこそが大切なのです。
コントロールできないことは放っておけ
日本チームを指導するときに体格の小ささがマイナスに働く場合もあるということは、先ほど述べました。
エディ氏はそれはただの条件として認めながら、別方法論を編み出して、体格の小ささを補う方法で勝利をもたらしました。
あらゆる問題には解決策がある。
それを「コントロールできないこと」として言い訳にするのは無駄であるということ。
また初の外国人ヘッドコーチとしてチームを率いながら、協会のやり方に疑問を感じて問題提起を挙げたこともあったといいます。
その多くは取り上げられることはなかった。
最初は悩んだそうですが、やがて達観し「変えられないものを、変えようとするのは無駄だ」という考えに至ったのです。
チームを強くして勝利をもたらすこと。
それがエディ氏のなすべきことであり、それを自覚したときから全ての悩みや不安は消え去ったそうです。
同じことを少し前に見た映画「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015年)で見たことがあります。
冷戦時代の話ですが、主人公のトム・ハンクス演じる国選弁護士が、アメリカ国内でスパイとして捕まったソ連のエージェントを弁護するために尋問したときに、あまりにも淡々としていたのに驚き「君は心配じゃないのか(死刑になること)」と尋ねたのです。
スパイの返答はこうでした。
「心配してどうにかなるのか?」
結局はアメリカ人捕虜との交換で無事にソ連に帰国できるのですが(トム・ハンクス演じる弁護士の尽力も手伝って)、このセリフは映画の後半にもたびたびでてきます。
スパイという特殊な職業だからといえますが(逮捕による死を覚悟している)、それでもこの言葉は自分の中にけっこう響きました。
心配しても仕方のないことは考えない。
同じことをエディ氏の著書で見つけた時に「こういう考え方だったのか」と。。
コントロールできないことは考えない、できることだけを考えて物事を進める。
自分の人生観に大きな影響を与える言葉になりました。
勇気とは「慣れた自分を捨てること」
本著でもっとも心に響いたフレーズです。
考えることと、それを実行に移すことには、大きな隔たりがあります。
その二つの間にどっしりと横たわっているのが「勇気」ではないかと、氏は述べているのです。
これはまさにそのとおりで、別のことわざで言うと「言うは易し、行うは難し」もそれですね。
英語でも「Action speaks louder than words(行動は言葉よりも雄弁だ)」があり、この考え方は洋の東西を問わない普遍的なものといえると思います。
日常生活でも「こうしたら良いな」と思うことはあっても、それをそのまま実行することはなかなか難しい。
その頻度が多い人ほど「勇気」があると言えますし、成功への道筋が大きく開かれているといえるのではないでしょうか。
さらにエディ氏は「勇気をもてないままやり過ごしているうち、時間切れになることも少なくない。これこそ本当に恐ろしいことだ」とも語っています。
特にスポーツ選手は活動する時間が他の職業に比べて短いので、こうした考えかたはかなり深く当てはまると思います。
私はスポーツ選手ではないですが、「時間切れ」という意味では、今の自分にも相当考えさせられる言葉なので、このフレーズはこれからの生き方に大いに参考にしないといけないなと感じました。
まとめ
以上がエディ・ジョーンズ氏による「人生で成功を収めるためのマインドセット」本の「気になるフレーズ」まとめです。
これ以外にも色々とためになる考え方がありましたが、特に今の自分に「グサリ!」と突き刺さったものを取り上げてみました。
著書のオリジナルは2016年に出版されたものですが、新たに文庫本になった本著を読んで、より深みのある言葉の数々だなと実感させられました。
実際に弱かったチームを育て上げて成功を収め、世界を驚かせた名将の言葉が重いです。
しかもその教えを基に成長した日本チームが、新たに指導者になったジェイミー氏のもとでブラッシュアップして、今回の(2019年)ラグビーW杯で大きな前進を遂げたのですから、まさにエディ氏が成功の種をまいたといえるのでしょう。
簡単な文章でコンパクトにまとめられているので、かなり読みやすいです。
ビジネスにも人生にも役立つ内容だと思うので、ぜひとも多くの人に読んで欲しいですね。