日本とモンゴルの死闘を描いた迫真の歴史バトルゲーム「ゴースト・オブ・ツシマ」が海外で非常に高い評価を得ています。
映像の美しさやリアルさはもちろん、キャラクターの持つ迫力、精神性、人と人とのぶつかり合い、そして文化、歴史など・・・
中世日本のエキゾチックさを余すところなく表現したグラフィックとストーリー性も、欧米のファンに好まれる理由の一つです。
日本でも発売されており、すでに多くのファンが鎌倉武士の世界観を堪能している模様。
今回はそんな高評価のゲームの内容と歴史的な話、先月に発売されたばかりのサウンドトラックの軽いレビューをお送りしたいと思います。
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ゴースト・オブ・ツシマについて
日本文化を代表する「武士」「侍」は今や海外でも多くのファン・崇拝者を持つに至っています。
すでに本国日本では絶えてしまった存在だからこそ(文化を継承している人は多くいますが、本物はいなくなった)、名誉と誇りを重んじる戦士の「精神的象徴」として多くの人々の心を捉えているのでしょう。
そんなサムライの一人である境井仁は、故郷をモンゴル軍によって蹂躙され、自らも傷を負って戦地から離れることになります。
数々の戦いと苦難を通じて悟ったこと、それは「武士の道を外れた戦いでしか、敵には勝てない」ということ。
たとえそれが幼き頃より「武士」の本分と精神性、そして「戦い方」を教え、導いてくれた尊敬すべき叔父の教えから外れることになろうとも・・・
そうして戦いの鬼と化した仁は、冥府から蘇った「冥人」として敵に挑んでいくのです。
このゲームはそんな「境井仁」の戦いを、迫真のアクションバトルと共に、映画のようなストーリー性、美しすぎるグラフィックを駆使して勧めていきます。
もちろんゲームなので主人公はプレーヤー自身。
ゲームの舞台は「対馬」。
史実である「蒙古襲来」をモデルにしています。
蒙古襲来とは?(歴史解説です)
蒙古とはモンゴルのことで、始祖チンギス・ハーンによって民族の統一を経たモンゴルが、次々に周辺国を攻略し、チンギスから続いた3代後にはユーラシア大陸の多くを支配下に収めることに成功した、史上空前の大帝国です。
その領域は東アジアから中央アジア、中東、ロシア、東ヨーロッパの広範囲に及び、まさに世界帝国というにふさわしい大領域をもつ帝国でした。
モンゴル帝国は各地域をチンギス・ハーンの一族である王や皇帝が支配し、東アジア(中国大陸や朝鮮半島)はフビライがハーン(皇帝)となって治めていました。
その国号は「元」。
その元が日本の支配を企み、大船団と軍団を派遣してきたのです。
これが「元寇」または「蒙古襲来」と呼ばれるものでした。
当時の日本は源頼朝が創立した鎌倉幕府の中期に入っていました。
頼朝の直系はすでに絶え、幕府のトップである将軍は天皇の一族を迎えたりと、すでに名目だけの存在になっていました。
実権を握るのは執権の北条家。
頼朝の幕府成立の後押しをした伊豆の有力武士の一族です。
その北条家の8代目の執権(首相のようなもの)北条時宗の時代で、すでに何度もモンゴル側から「友好の目的」で使者が訪れていました。
しかしその使者を「モンゴルの傘下に入れ」と理解した幕府側は無視します。
そうして訪れたモンゴル軍の襲来。
10万ともいわれる大軍団を前に、最前線の対馬や壱岐は瞬く間に蹂躙されたのでした。
当時の鎌倉武士の戦い方は「名乗りを上げて正々堂々と一騎打ちする」もしくは「各部隊が各自で戦う」もので、軍全体を一つのまとまりとして各部隊をその絶対的な命令下においたモンゴル軍とは大きく違うものでした。
なので、集団戦法で効率的に戦いを進めるモンゴル軍を前に、鎌倉武士は個別に戦いを挑んで破れていったといいます。
しかも鎌倉幕府の軍の動員(集めること)が遅れたために、武士団が九州に派遣されるころにはすでに対馬や壱岐は陥落後だったということも、最前線の惨状をもたらしたのでした。
武士団が到着し、モンゴル軍と死闘を始める中、台風が襲来して船団を沈めたといわれていますが、正確なことは分かっていません。
ただ武士団も相当に奮闘し、そのためにモンゴル軍の上陸作戦が上手くいかずに、台風で押し流されたという説が有力のようです。
一端は撃退した幕府でしたが、モンゴルが再び襲来することを恐れ、各地に上陸を阻む石塁を建設します。
そして7年後、再びモンゴルは大船団を組んで襲来しますが、今度は前回の教訓と準備が幸いし、日本側も万全の態勢で迎撃することができました。
上陸を阻む必死の防衛戦、夜間の敵陣営へのゲリラ的な夜討ちを繰り返し、確実にモンゴル軍の戦力を削いでいきます。
そして再びやってきた台風によって、モンゴル船団は海のもくずと消えたのです。
徹底した研究で細部にまでこだわった作品
この作品は日本のゲーム会社が作ったのではなく、アメリカのSucker punch productionというゲーム開発会社の作品というのが驚きです。
評判やリリースされている映像動画を見る限り、限りなく史実に即した描写がゲームの細部にまで宿っています。
そんなSucker punchのクリエイティブ・ディレクター、ジェイソン・コーネル氏が制作に関する思いや経緯を語ったインタビューがあり、一読して「なるほど、だからあそこまでのリアリティが可能になったのか」と納得しました。
では氏のインタビューの要旨を抜粋しておきましょう。
・制作のきっかけは、時代劇映画の「十三人の刺客」と「七人の侍」を見たこと
・中世の日本の美しさをゲーム作品で再創造したかった
・オープンワールドなのでプレイヤーは自由に移動して様々な事ができるのが魅力
・日本語音声はSIE JAPAN Studioが協力してくれた
・日本の古流柔術の専門家が協力してくれた
・太刀、打刀、薙刀、槍などの武器を持ってきていて武器の使い方のレクチャーや演舞の披露もしてもらったが、高性能モーションキャプチャー用カメラが彼らの動きを捉えることができなかった(ゆっくり動いてもらった)
・ゲームを制作するにあたっての調査で博物館に足を運び、鎌倉の大鎧に強く惹かれた
・兜の精巧な装飾、単なる戦いの道具ではなく、侍の名誉を飾るかのような美しさに魅かれた
・美しさを秘めた鎌倉時代に愛着を持つようになった
きちんと時代考証をして、武士の動きも研究し、武士の鎧へのこだわりを理解した上で制作したということが、すごく日本人として嬉しいですね。
本格的だなと思ったのは、多くのファンが指摘している主人公の顔。
最近の日本のゲームにありがちな「美しい」ものではなく、いかにも「田舎の武士」といった垢ぬけない顔立ちのサムライを主人公にしているところが、本作の歴史ゲームとしてのレベルを一段も二段も引き上げていると思います。
その「垢ぬけない顔」も戦いを進めるにつれて気にならなくなり、凛々しく勇敢で、ときには残忍ですらなる戦士の表情に見えてきます。
人間の評価というのは顔の造形ではなく、その生き様や覚悟で変わってくるのだなと、ゲームながらに感じてしまいました。
音楽(サウンドトラック)も素晴らしい
ゴーストオブツシマのオリジナル・トラックが8月5日に発売されています。
聞いてみましたが、まるで映画のサウンドトラックを聴いているかのような臨場感と迫力を感じました。
曲によってゲームのシーンが変わることが分かり、時には勇壮に、時には物悲しく表現されるサウンドの妙は、深く重厚な魅力に彩られています。
武士の戦いを描いてることから、和楽器である尺八、琴を使って鎌倉時代の雰囲気を醸し出しているところや、SFアクションに通じる重厚でクラシックなサウンドを織り交ぜることで、モンゴルという世界帝国との戦いをイメージできます。
作曲は「キック・アス」「47RONIN」の作曲家イラン・エシュケリ氏、「陰陽師」「ハンニバル・ライジング」の作曲家、梅林茂氏が担当。
本格的な音源が堪能できると思いますよ。
まとめ
とてもゲームとは思えないリアルさとストーリー性を併せもった人気作「ゴースト・オブ・ツシマ」。
物語の設定が史実であること、主人公の生い立ちや葛藤が映画のように展開されること、そしてアクションゲームとして思う存分、武士の技を楽しめることが、このゲームの人気をとくに欧米で爆発させた要因だと思います。
またこのゲームをきっかけに、新型コロナによって観光客が激減した対馬の自治体が「ゲームの聖地」として地域の魅力を発表する動きも出てきています。
ゴースト・オブ・ツシマについて~対馬観光物産協会ホームページ
まさに「数百年の時を経て境井仁が対馬の民を守るために再臨した」ことになりますね!
ゲームと共に対馬の自然や歴史遺物を皆で盛り上げていきたいですね^^(コロナが収まったら観光にもぜひ)