スリップノットのボーカル、コリィ・テイラーの初ソロアルバムのレビュー。
バンドもソロアーティストとしてのテイラーも全く知らなかったのだけど、機会があって聞いてて「すごく良かった」ので紹介しようと思った。
アルバムジャケや宣伝ポスターのイメージで「どうせ見た目だけのラウドなメタルロックだろ」と思っていたところ、アルバムを聴き始めると「おおおっ!」と一気にアップグレード。
とにかく正統派ハードロック。
1980年~90年代にガンズやメタリカ、ウォレント、キッドロックを聞いてきたようなHRファンなら、どこか耳馴染のある懐かしいサウンド。
それでいて全然古さを感じさせない、カッコいい音作りなどなど・・・
ラップもありの、あらゆるジャンルのロックファンを心地よくさせるようなクオリティの高い一枚になっていると感じた。
そんな興味深いコリィ・テイラーとソロアルバムについて詳しくレビューしていこうと思う。
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コリィ・テイラーとは誰だ?
オルタナティブ・メタル界隈では超有名なアーティストのようだけど、恥ずかしながら全く知らなかった。
今回の記事のために調べてみると、色んな側面で自分や自分の好きな音楽ジャンルとの共通性があることを知って、一気に親近感が湧いた。
まずはテイラーの簡単なプロフを紹介しよう。
・米国アイオワ州で1973年12月8日生まれる
・母子家庭で育った
・祖母がエルヴィス・プレスリーが好きだった影響で、独学でギターをマスターする
・10歳からタバコやドラッグにハマり始め、20歳以降からドラッグやアルコールで命の危険に何度も陥る
・ポルノショップで働いているときにスリップノットのメンバーにボーカルとしてスカウトされる
・ストーンサワーを結成し、ボーカルを務める
・歌唱力の高さはヘビメタ界でも随一
・英国の名門オックスフォード大学に講師として招かれる
・首に日本語のタトゥーを入れている「父」「死」
かなり濃い人生。
ロック系ミュージシャンに多い「複雑な家庭」という環境も、現在の彼の音楽的アイデンティティのバックボーンになっているのだろうか。
長じてお父さんに会うことが出来たそうだが、一体どんな気持ちだったのか?
さらに歌唱力の高さが抜群という事。
それは確かに今回のアルバムを聴いていて分かることだ。
英国の名門大学にも招かれたというのも驚きで、詳しく調べてみると、以下のような記事が出ていた。
カンザスのラジオ局“98.9 The Rock”でCoreyが語ったところによると、
「オックスフォード大学から、講義をしてくれないかってオファーがあったんだ。皮肉だよ、オレは高校すら卒業してないのに。誰の講義を聴きたいかって学生から投票をとって1位に選ばれたらしい。“ああ、オーケイ、やってやるよ”って引き受けたけど、たぶんオレは、毒づいたり大汗かいたりするんじゃないかな。」
記事は2011年のことなので、もう9年も前になるが、当時から若い学生の間でもテイラーは人気だったようだ。
一体どんな講義になったのか、すごく気になるところだけど・・
こういう感じで非常に興味深いコリィ・テイラーのプロフなのだけど、彼を見出したバンドについてある意味「目を引いた」過去がある。
テイラーを有名にした「スリップノット」というバンドについてだ。
ロック雑誌やネット情報でときどき目にしていたグループで、「全員が変な怖い仮面をかぶってるマニアックなバンド」というイメージがあった。
マリリン・マンソンの初期のバンドに抱いていたイメージとそっくりというか。
【マリリン・マンソン】世紀の悪人エンターテイナー、マンソンが激しく歌う「ファイト・ソング」!
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曲もエフェクトを利かせたボーカルでドラムのサウンドがやたらとラウドな「おどろおどろしい」タイプなのかなと勝手に想像していた。
でも今回のテイラーのことで興味を持って動画で視聴してみると、意外に「普通」なメタル系ロックであると分かったのだ。
声もすごく普通に王道ロックの爽かさがあって「お、いいな」と見直してしまったくらいに。
コリィ・テイラー
たとえていうなら、マリリン・マンソン的キャラとオルタナメタルサウンドの「爽やかバージョン」という感じだろうか。
そしてそれがすごくスリップノットに対するイメージを引き上げてくれた。
コリィ・テイラーと合わせて「これから聞き続けてもよいな」と思わせてくれる「良質メタルロックバンド」な位置づけに変わったのだ。
コリィ・テイラー「CMFT」を聞いた感想
そして今回の主役であるコリィ・テイラー。
そのソロデビューアルバム「CMFT」をフルリスニングした感想だ。
一言でいうと「気持ちいい」。
さらに一言加えると「どこか懐かしさがある」ということ。
きっとそれはテイラーと自分が同世代であることも関係していると思う。
同じ時代を生きていて、青春時代に聴いていたジャンルが似通っていれば、当然そこから受けた影響というのはずっと残るものだから。
そんな「共感」すら覚えたコリィ・テイラーの新譜について、それぞれ短いけれど感想をつけていこうと思う。
1:HWY 666
西部劇の始まりみたいな雰囲気 スラッシュ的なハードロックで耳馴染がいい。
2:Black Eyes Blue
アニメの主題歌を彷彿とさせる「まっすぐな熱さ」がある。正統派ロック。
3:Samantha's Gone
ギターがかっこいい。疾走感あり。モトリー系の懐かしさを感じるハードロック。
4:Meine Lux
マイネマイネのコーラスがひたすら続く。マイケルモンローぽい早めのハードロック。
5:Halfway Down
ギターのリフがかっこいい。ボーカルとギターの交互の波のような疾走感が気持ちいい。
6:Silverfish
乾いたロックバラードのイントロ。中盤から爽快感がでてくる 90年代のHRバンド、ウォレントを彷彿とさせる。
7:Kansas
イントロからのアコギの爽やかさが良い予感をもたせてくれる。メロディとリズムが懐かしすぎる。80年代洋楽ロックを現代風にアップグレードした素晴らしさ。サビとコーラスに鳥肌がたつ。青春時代を思い出させてくれる良曲。
8:Culture Head
不穏な始まり。スラッシュ的なミドルテンポのハードロック。可もなく不可もなく。
9:Everybody Dies on My Birthday
アニメの主題歌みたいな感じ。疾走感あり。ストレートなハードロックで結構好きだ。
10:The Maria Fire
ジャズテイスト風で雰囲気がある。サビに近づいたらハードロックに原点回帰。ジャズとハードロックの融合で面白い。
11:Home
奥さんに向けて作ったといわれる曲。演奏はピアノのみのバラード。テイラーの魂に響くボーカルが胸に染みる。
12:CMFT must be stopped
ラップ風のロック。キッドロックを彷彿とさせる危険な香りのする曲。途中で出てくる黒人ラッパーもキレがあってかっこいい。
13:European tour bus bathroom song
スピードメタル系のロック。ドラムの回転がめちゃくちゃ速いな。歌はよく分からない。皆でコーラスしてる感じ。
まとめ
コリィ・テイラーは30代くらいのミュージシャンだと思っていたけど、実は自分とほぼ同世代の40代後半だと知って驚いた。
見た目はもう少し若く見えるし、所属してるバンドも今でも人気があるから、若者に近い世代なのかなと思っていたが、案外彼らの年齢も自分よりなんだなと知って、急に親近感が湧いてきた(笑)
そして何よりもコリィ・テイラーの新譜「CMFT」のクオリティの高さに驚いた。
むしろアルバムのもつ感性が自分に響いたというほうが正確だろうか。
懐かしいハードロックだけど古く全く感じさせない。
ボーカルに伸びがあり爽やか。
とにかく歌が上手い。
ちょっとハスキーな感じもカッコいいい。
ギターリフの「うねり」とボーカルとのハモリが最高に気持ちいい。
バックコーラスのタイミングと回数も妙に癖になる。
全てが自分の「波動」に合う感じ。
言葉で説明するのは難しいけど、それが正直な感想だ。
アルバムの紹介では「若い頃を思い出して作った」と本人の言葉もあった。
80~90年代のハードロックを聴いて育った世代なら、間違いなくハマる一枚だ!
↓アルバムで一番お気に入りの曲