2012年公開のトールキン3部作シリーズ、第一弾。
約10年前に同じくトールキン原作の「ロード・オブ・ザ・リング」が公開されて世界中の話題をさらったが、今作はその旅物語のさらに前のお話を映画化している。
映画好き、とくに洋画好きなら、知らない人はいないほど超有名なシリーズなので、あえて説明するまでもないと思いますが、一応流れをざっと説明しておきます。
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ストーリー
中つ国という架空の世界でのこと。
そこではかつてサウロンという悪の化身が世界を支配しようと、眷属を集めて平和を守らんとする勢力と戦いを繰り広げていた。
決戦の場で、力の源泉である指輪を失ったサウロンは、たちまち肉体を失い、彼の部下も多くが滅びていった。
ようやく平和になった中つ国だったが、サウロンから奪った指輪を巡って多くの争いが起き、王国の内部で紛争が多発した。その争いの最中、指輪は川に流れ、いつのまにかホビット族のゴラムという男の手に渡ってしまう。
指輪には悪の魅力が詰まっており、持つ者の身と心を化身に変えてしまう魔力があった。
長年の月日を経て、指輪の影響でゴラムは妖怪のような姿になってしまうが、それでも指輪を「いとしい人」として守り続けていた。
そんな中、たまたまゴラムの住む洞窟を訪れたホビット、ビルボが、ゴラムの落とした指輪を手にすることになった。
ゴラムは怒り狂い、指輪の持ち主を探し続ける。
一方のビルボは拾った指輪の魔力に気付くことなく、村に帰宅した。しばらく後に、村を訪れた旧知の魔法使い、ガンダルフがビルボを旅に誘う。
それはドワーフと呼ばれる地底の種族が、失われた自分たちの王国を取り戻す旅であった。
ガンダルフはホビット族の敏捷性を買っていて、なおかつ中でもビルボの好奇心旺盛なところ、勇敢な点を見込んでの誘いだった。
最初は断り続けたビルボだったが、心の中で湧き上がる冒険心を押さえることが出来ずに、旅に参加することになるのだった・・・
心に響いた言葉
前シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング」と同様に、この「ホビット」を含めた中つ国の物語は決してただの冒険譚というだけではなく、旅を通じて培われる友情や愛情を描いたものだろう。
原作者のトールキンが原作を執筆したのが、第一次世界大戦の頃で、彼自身この戦争にイギリス陸軍の少尉として赴任したことで物語の着想を得たと言われているので、そこで体験した死や生のさまざまなことがトールキンの創造の源泉なのは確かなのだ。
トールキンが物語を通じて伝えたかったことは何か?
それは全シリーズを通じてさまざまな形で描かれており、特にこの映画『ホビット』の中に核心的な言葉が含まれていると個人的には思う。中でもガンダルフとバギンズ、トーリンの三人の織り成す人間模様とその言葉が、なんとも味わい深いのだ。
ホビットを旅の仲間に引き入れることに最初から反対だった、ドワーフ族の王トーリン。
剣も使えず、魔法も使えず、ただ食べることが好きで快楽を求める小さな人(ホビット族)が、失われた王国を取り戻すという崇高で激しい戦いに、到底役に立つとは思えなかった。しかしガンダルフは執拗にビルボの旅の参加を求める。
ビルボ当人もなぜガンダルフがそこまで自分を必要とし、買っているかも分からなかった。むしろドワーフたちの自分に対する評価の方が正しいように思えたのだ。
そんな旅の中で、戦いの後に洞窟で剣を見つけたガンダルフは、それを表で待つビルボに渡す。
「なぜ僕に?今まで剣なんて持ったこともないのに」
訝しげに訊ねるビルボに、ガンダルフは答えた。
「真の勇気が試されるのは命を奪うときではない。命を救うときなんじゃよ」
と。
このとき、ビルボ自身も、なぜガンダルフがエルフの貴重な剣を持つように進めてきたのか、分からなかっただろう。
しかしガンダルフの言葉は本当だった。
彼はビルボのうちに眠る勇気と熱い心を確信し、それが必ず旅の仲間の危機を救うだろうと、半ば予言めいた感覚で信じていたのだ。
その思いは、後にガンダルフがエルフの女王ガブリエルの元を訊ねたときにも、同じように伝えている。
「なぜホビットを選んだのですか?」
ガブリエルの問いに、ガンダルフはじっと考え、そして答えた。
「私にも分かりません。ただ偉大な力だけが悪を封じられるといいますが、私の考えはそれとは違う。大事なのは些細な事なんです。普通の人々の日々の行い。闇を追い払うのは思いやりや愛情だと・・多分、私も怖いのです。あのホビットはそんな私に勇気を与えてくれるんです」
そう言ったガンダルフに、ガブリエルは優しく微笑んだ。
最初に「なぜホビットを?」と訊ねたガブリエルの言葉だけを聞くと、旅の当初にドワーフたちがビルボに対して思ったことと同様の意味を受け取ってしまうだろう。
しかしガブリエルは分かっていたに違いない。
なぜガンダフルがホビットを選んだのかを。
そして彼が答えることもすべて・・・・
エルフの女王である彼女は優れた叡智で持って、旅の始まりを見通していたのだ。
それを証明するときはやってきた
映画の終盤、ドワーフたちを付け狙うサウロンの忠実な部下アゾクが、自らの軍団を率いて彼らを襲った時だった。
アゾクこそが自分たちのかつての王を倒した存在であり、オーリンにとっては父の仇。
オーリンは全てを忘れ、アゾクに襲い掛かった。しかし多勢に無勢であった。
たちまちアゾクに押し倒され、命を奪われる目前まで至る。
他のドワーフも助けに行こうとするが、彼らのいる場所からは遠すぎた。
そのときだった。
ビルボがアゾクの前に立ちふさがったのだ。
非力で剣を持ったことも、戦ったこともないビルボが、自らの命を顧みることなく間に割って入ったのだ。
大地に倒れるトーリンは驚いた。
ホビット族を弱く、すぐに逃走する惰弱なものとして疑いの目で見ていたのに・・・
そんな惰弱なホビットが命をかけて彼を助けたことに・・・
到底敵わないと知りながらも・・・
幸いガンダルフの呼んだワシによってビルボらは助けられ、別の場所に移された。だがこのときに見せたビルボの勇気と男気は、深くトーリンの胸を突いていた。
やがてワシが彼ら全員を安全な場所に移し終えたとき、トーリンは真っ先にビルボの元に向かった。
「前に言ったな?お前は足手まといだと!生き残る術を持たない者は我々の仲間とは認めないとも!」
「・・・・・」
激しく問い詰めるオーリンに言葉を失うビルボ。
だが次の瞬間、オーリンは頭を下げた。
「だが・・全ては俺が間違っていた・・・許してくれ」
驚きながらも、笑顔を見せるビルボ。
やがてはにかみながら、オーリンの言葉に答えた。
「いいんです。確かにそのとおりです。僕は英雄でも、戦士でもないのですから・・・」
ガンダルフが旅の最初に、ビルボやガブリエルに言った言葉が全てつながった瞬間。
ホビット族(ビルボ)は武器も魔法も使えないが、”何物にも屈しない”心の強さを持っていた。
それはあたかも、原作者のトールキンが戦争で傷ついた心身をいやしている時に感じた日常の大切さや、庶民や大衆の根源的な強さを、この全てのシーンと言葉で表現したかのように・・・・
これが私がこの映画で最も強く引き付けられた描写であり、これに続く2、3にもテーマとして踏襲されていくだろう、ビルボの普通なるものの心の強さなのだなと感じた一幕でもあった。
まとめ
振り返ってみれば、前作ロードオブザリングでも、主人公のフロドはビルボと同様に、戦士や魔法使いとしての強さはなく、ただ何物にも負けない信念のようなものがあった。
しかしそれを言葉ではっきりと説明したのは、今作が初めてであろうし、少なくとも私がそう認識したのは、これが初めてであったように感じた。
映像や世界観以上にその言葉が本当に素晴らしいと思った。
この物語が世界中で愛され続けている理由が少しは理解できたような気がする。
ぜひまた他の作品を見て新たな”言葉”を発見してみたいと思います。
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