アメリカの有名司会者ラリー・キング氏の「トーク本」レビュー&学びの紹介です。
ラリー・キングといえば、1985年から2010年まで25年間続いたCNNの名物番組「ラリー・キング・ライブ」が有名ですね。
世界の著名人ともインタビューをしていて、ゴルバチョフやニクソン、レーガン大統領など政界の大物を始め、クリント・イーストウッド、エリック・クラプトン、マドンナ、トム・クルーズらのハリウッドセレブとのトークで人気を集めた「トークの達人」でもありました。
私もこの人の番組の音声CDで英語リスニングの勉強をよくしたもの。
独特の少ししわがれた低い声でゆっくりと話す様が特徴的で、ゲストの赤裸々な感情や思いを巧みに引き出していく話し方は非常に印象的でしたね。
そんなラリー氏が2016年に出版した書籍「トークの帝王ラリー・キングの話し方の極意」には、氏の司会者人生で培ったトークの技術を余すところなく伝えてくれた「お役たち」な内容になっています。
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自分らしく正直に語ること
2010年に引退するまで数多くの著名人とトークを続けて、全米でも指折りの「トークの達人」と称されたラリー・キングも、最初はすごく緊張していたといいます。
ラリーが長い番組DJで得た経験から学んだことが、
自分が体験したこと、思っていること、感じていることを正直に話し、視聴者と共有すること
ということ。
自分も以前に友人の結婚式に招待されて、司会者からマイクを向けられてすごく緊張したことがありました。
何か新郎との思い出を語ってくれという振りでしたが、唐突だったので言葉が出てこずにしばらく逡巡していると、新郎と目が合って「そうだ」と思い出したのです。
それは昔行ったキャンプでのことで、男同士でバカをしたことの思い出でした。
このときの話を「今緊張していて少し意識が飛んでいましたが・・」と前置きをしたあと、当時の懐かしい思い出話をして会場を笑わせることに成功したのでした。
このときの私も「思っていることを正直に話す」ことで乗り切れたのです。
上手く話そうとするから言葉が詰まってしまう。
だからすべてを明らかにして心を軽くすると、けっこう話せるものなのですよね。
そしてこれがラリー曰く「話の大原則だ」と強調しているのです。
話すことはスポーツのように訓練できる
そんな達人も若い頃はとにかく色んな番組の司会者やキャスターを務めたといいます。
とにかく少しでも長い時間を話すように心がけ、それを磨いていったのです。
話すことは野球のバッティング似ていて、一人で話すことでも練習は可能だということ。
ラリーは「鏡の前で自分に向かって話す」「犬や猫、鳥、金魚相手に話しかける」ことも推奨しています。
これは実に素晴らしい方法で「何しろ反論される心配がないから」だと言っているので、ここは笑ってしまいました。
でも確かに動物相手なら反論されようがないですよね。
でもトークも所詮は口や舌の運動にすぎないのだから、上手くなるためには動かし続けるというのは理にかなっています。
話せば話すほど上手くなるのなら、その機会を作ることが大切。
そう考えると、女の人やおばちゃんのトークスキルが高いのは納得ですね。
話し相手に興味をもとう
トーク番組の相手と話すときは「身を乗り出すように」ラリーは相手のことを聞くといいます。
これは相手に「自分に興味をもってくれている」と感じさせるためのもので、相手の知識に敬意を示す意味でもあります。
さらに相手から聞きたいことは、ギブ&テイクの要領で、自分も積極的に語っていこうとも述べています。
相手との垣根を払うこと。
敬意をもって会話を行うこと。
人と人の関係も同じですね。
会話のキャッチボールと共感が大事
会話の達人はキャッチボールが得意です。
会話のキャッチボールができていない人は、野球で言うなら、相手に常に速球の球をビュンビュン投げ続けている状態なんですね。
これでは相手は呆れて会話を続ける意思をなくしてしまいます。
ラリー個人も「話していて一番楽しい人」は
・共感してくれる人
・自分の言葉を受け止めてくれて、言葉にならない気持ちも分かってくれる相手
と語っています。
常に相手との言葉の投げ合いを楽しみ、相手の話に耳を傾けて共感することが大切なのでしょう。
これは自分の経験でも深く納得するところでもありました。
自然なユーモアも忘れずに
ここのくだりは少し難易度が高いと感じましたね。
何しろ日本とアメリカでは文化が違います。
会話にユーモアを挟むように子供の頃から訓練されている欧米文化で育った人と、そうではない文化の人間だと話す内容に大きな差が出てきますから。
しかもラリーは「会話の流れを止めない自然なユーモアが必要」と言っているのですから、さらに難易度は上がってしまいますよね(笑)
あえていうなら、「自虐ネタ」で笑いをとるというのが無難ではないでしょうか。
たとえば「いやあ今日は暑いですね。あんまり暑いんで今、自分がどこにいるのか分からないくらいですよ」とか。
いや、全然面白くないか(笑)
このへんのユーモア感覚は日本人的には難しいですね。
でも練習の意味はありそうなので、落語とかトークショー番組で勉強してみようと思います。
黙ることも必要
のべくまくなしに話しかけられても、こちらは疲れますし、多くを語る必要がないときは、黙っていた方が好まれる状況のときだってあります(誰かに不幸があった時や、悲しい出来事があったとき)
自分的に解釈するなら「会話の間」を持たせることも大事で、そのときの沈黙が「間」になり、適切な会話の流れを作るというふうに捉えています。
言葉だけでなくても、表情で相手に気持ちを伝えることもできますからね。
初対面で緊張するときの会話の特効薬
多くの人は恥ずかしがり屋で、私もそうだ、とこの項の最初でラリーは述べています。
だからこそ相手と初めて話すときは緊張するし、それをどうやってクリアしようかと悩むので、またそれが緊張を生む流れになりがちです。
そんなときは「この人も自分と同じくらいに恥ずかしがり屋で、緊張している」と思うこと。
どんなに社会的に上の立場の人や、自分よりも会話の上手そうな人だとしても、初めて会う人との会話は緊張するものなんですよね。
そして相手が緊張していたら、その緊張を解いてあげることができたら良いとも述べています。
その効果的な会話の突破口は「相手に関することを質問すること」。
人は確かに自分のことが話題になると嬉しいもんなんですよね。
会話に困ったときの助け舟
本では「会話のきっかけを作る話題」として紹介されていましたが、個人的には会話が止まった時や、話に困った時にも役立つ話題でもあります。
たとえば、
・子供の話
・動物の話
・場所の話
という感じです。
どれも嫌味がなく、さらっと話して聞けるライトな話題なので、会話のきっかけや途中のつなぎにベストですね。
「はい」「いいえ」になる会話は避ける
相手に質問するときに「~ですか」と聞くことがあります。
このときに「はい」「いいえ」しか返しようがない内容だと、相手がそれを返してきたときに会話は止まってしまいます。
「今日は暑いですね」
「景気が良くなると思いますか?」
このままだと「ええ」「いいえ」で終わってしまう可能性が高いので、そこに少し言葉を付け足すことで、相手のリアクションをもっと引き出すことができます。
「今日は暑いですね。この調子だとビールの売れ行きも上がりそうですね。どんな銘柄が好きですか?」
「今年は色々あったので経済の動向も良くないですね。何かいい景気刺激策とかありますかね?」
のような具合で相手の意見を引き出すような質問にすると、会話が途切れることがなくなりますよね。
そのうえで「相手の話をじっくり聞くこと」「相手が話している時は黙っていること」を加えると完璧です。
話題に困った時のネタ
何人かが集まって話している時に会話が途切れることがあると思います。
親しい仲なら特別気になることはありませんが、知り合ったばかりのメンバーだったり、合コンだった場合は、少しきまずい空気が流れることもしばしば・・
そんなときに手軽に使えるのが、本書で紹介されていてこの方法です。
【もし~だったら?】
・あなたが鳥だとしたら、どこに飛びたいですか?
・宝くじが当たったら、何を買いたいですか?
・もしあなたがサッカー選手だったら、どこのチームに移籍したいですか?
などなど、その場のメンバーにそぐうような質問を投げかけると、けっこう話題は尽きなくなります。
これは良い方法だと思いますね。
まとめ:正直に語ること、相手の話を聞くこと
本の中のいくつかを紹介させてもらったラリー・キング流会話術ですが、その全ての底流に流れているのは以下の2点だと思います。
・自分のことを正直に語る
・相手の話を聞くこと
もちろん正直にとはいっても、思っていることをそのまま口にするのではなく、相手との会話にそぐった内容の上での「正直」にです。
そしてそれは「相手への敬意を忘れないこと」につながります。
相手の話を聞くことも「敬意」の表れでもあると思います。
会話のテクニックは多くあれど、この2点さえ忘れずに意識して会話を行えば、まず間違いのない会話を楽しめるのではないでしょうか?
ほかにも多くの会話術が掲載されているので、興味のある方はぜひ本を読んでもらえればと思います。
追記
2021年1月23日にラリー・キング氏はロサンゼルス市内の病院で亡くなられました。
1月から新型コロナウイルスに感染して入院していたということです。
享年87歳。
多くの名言とメイインタビューを世に残した「言葉の達人」でした。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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