よくイギリス英語は発音がきれいなので聞き取りやすい、ということが言われていますよね?
私もそう思っていました。
だって英語の母国ですし、アメリカのように世界中から移民が集まってできた英語よりは、きっと聞き取りやすいと考えていたんですよ。
しかしそれは完全な間違いでした。
少なくとも私が体験した英国での英語では・・
今回は16年ほど前の私の実体験を交えて「イギリス英語ってなんだ?」ということを考察していきたいと思います。
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早口すぎて聞き取れなかった英語
それまで勤めていた会社を辞めて、ヨーロッパに旅行に出かけた時のことです。
まだ20代後半だった私は、特に次の仕事の当てもなく、とりあえずまだ行ったことのない欧州大陸を見てこようと「ささっ」とバックパック片手に旅立ったのでした。
ホテルの予約は最初の宿だけでしたので、あとは全て現地で探す毎日でしたが、それなりに新鮮で楽しい毎日を過ごしていました。
最初にたどり着いたヨーロッパはイギリスです。
パディントン空港で初めてイギリスに降り立ち、そこから電車でパディントンの駅に行き、予約していたホテルまで行って荷物を下ろすまでは何の問題もありませんでした。
ホテルで一服すると、街を散策するために出かけたときに「恐怖の英語タイム」に遭遇することになったのです。
日本の郊外都市とそれほど変わらない、意外に静かできれいな街並みを散策していると、いつのまにか道に迷ってしまっていました。
地図を見ながら色々と歩き回ったのですが、どうしても自分がどこにいるのか分かりません。
最初は「これも旅の醍醐味さ」と軽い気持ちで楽しんでいたのですが、2時間、3時間と経過するうちに「これ大丈夫か?」と不安な気持ちになってきていました。
すでに時刻は夕方の6時になっていて、あたりも少しづつ薄暗くなってきています。
早めに宿に戻らないと、このままだと夜になってしまう・・と思った私は、歩き回っている間に途中で立ち寄ったミニホテルに飛び込んで地図を見せ、「ここに行くにはどうしたら良いですか?」とつたない英語で尋ねました。
すると親切なフロントの男性が「オーケー!」な表情と手ぶりで親切に外を指さしながら教えてくれたのです。
「×〇▼◇@!?><M:;@「¥,are you OK?」
まったく聞き取れません。
とにかく早口過ぎて何を言ってるのか理解できないうえに、1ミクロンも単語が脳に言葉が到達できないでいました。
「ソーリー、ギブミーワンモアタイム?」(すいません、もう一度言ってもらえますか?」
恐る恐る尋ねると、親切そうな若いイギリス白人の男性スタッフは「オ―カーイ!」(そう聞こえた)と頷くと、再び、
「×〇▼!”#*@;*+-&%’...right?」
と返してくれたのです。
再び呪文でした。
早口過ぎる。
とにかく早口過ぎて英語を言ってるのかどうかも分かりません。
これ以上聞いても無駄だなと思った私は「サンキュー」と笑顔で礼を言って(たぶん顔は引きつっていたと思います)、そのミニホテルの外に出たのでした。
(イギリス英語ってのは、みんなこうなのか?)
秘かに驚愕しながら、いや、きっとあれはあのお兄さんだけが特別に早口なだけだ、と自分を納得させ、再び夕刻のパディントンの町を歩き始めたのです。
そして再び見つけた別のミニホテルのロビーに入ると、そこのフロントデスクにいた男性と女性のスタッフに地図を見せて道を尋ねました。
そして・・
「#$%&'<>?_{~~||)))(%+`{}/*----you kan go, right?」
(キャンではなく、カンなのか?)
とすでに冒頭の数語で理解することを諦めていた私は、言葉の節々に出てくるイギリス英語独特の発音にすら気を配る余裕を見せていました。
「オーケー、サンキュー」
今度は諦めたような笑顔を見せて、同じように笑顔で手を振るスタッフに背を向けて、私はホテルを後にしたのでした。
(これは帰られんな)
半ば宿に戻ることを諦めつつあった私は放心状態で薄暗くなったパディントンの歩道をトボトボと歩いていたのです。
早口な上に訛りのキツい外国人移民の超難解な英語
その後、街を歩く住民らしき人の幾人かに道を尋ねて、ようやく無事に宿に戻れたのは夜の8時を過ぎた頃でした。
幸い、どの通行人も私が外国の観光客だということを理解してくれて、かなりゆっくりめの英語で対応してくれたのも大きかったです。
このとき思ったのは「イギリス英語というのは想像以上に難しいじゃないか」ということ。
特に聞き取りに難があったのは「C」の音を「K」に発音する傾向があるなということでした。
「CAN」を「KAN」と発音することと、日本語のようにAの母音に力を入れて発音するので、自分がそれまで聞きなれていたアメリカ英語とは違う感覚を感じました。
翌日はパディントンから移動してロンドンに向かったのですが、そこで見つけた宿の女主人の英語は比較的にゆっくりめだったので、なんとか普通に会話をすることができました。
パディントンの若いスタッフは男女とも皆、めちゃくちゃ早口でしたから、これはかなりホッとしましたね。
その後、その宿を起点にして大英博物館や大英図書館、美術館などを周り、ハロッズがある中心地を散策して楽しむことができました。
問題はその後です。
次の目的地はイギリスの中部の街ヨークで、そこで城壁に囲まれた街並みを見学するつもりでした。
ヨークにいくために最寄り駅のキングス・クロス駅で列車に乗るのですが、乗り換えや時間が分かりにくかったので、インフォメーションデスクのような場所で尋ねることにしました。
駅に入って正面のすぐのところに設置された受付デスクのようなブースに立って、二人のパキスタン系の駅員さんが並んでいる利用者の質問を受け付けていました。
私も並んで自分の番を待ち、訊ねる段になると「ヨークへの乗り換えと時間なんですが・・」と尋ねました。
するとパキスタン系のその駅員さんはすぐさま「^--00+-*/*-!”#$%&’=~|!」と超早口で回答してきたのです。
(おおおおおお・・・)
内心またきたか!と思いつつも、今度ここで引き下がっては希望の電車に乗れなくなるという思いもあったので、勇気を鼓して再び同じ質問をしたのです。
しかし結果は同じでした。
一回目と同様に、よりスピードを増した難解英語を繰り出してきて、しかも表情は寸分も変わっていないところに妙にプロ意識を感じながらも(ロンドン市内のインド人が経営していた小売店の対応はかなり塩だったこともあり)、やはりこれ以上の会話は無理だなと判断し、「サンキュー」と笑顔で礼をいってその場を離れたのでした。
今度の英語は「C」が「K」になっているから聞き取りずらいとかいうレベルではなく、「訛り」がキツすぎてもはや英語の態を成していない、ということに尽きました。
いや、ネイティブの人や英語に慣れた人なら、前後の文章で簡単に類推できるでしょう。
しかし土地のことに無知で、列車用語も分からない(英語で)、もともとの英語リスニング能力もそれほど高くないということも重なったのか、とにかく「英語ではない外国語」を聞いている気分になっていたのです。
ずいぶん後になってから日本でインドの人と友達になったのですが、外資の有名医薬系企業に勤めるエリートのその人でさえも、その話す英語はかなりインド訛りがきつくて「パードン?」と何度も聞き返すことがよくありました。
とにかくインド・パキスタン系の人の英語は訛りがきつい。
イギリス滞在時で一番、実感した出来事でした。
エジンバラで出会った恐怖のおババの訛り英語!
その後、なんとか目的の列車に乗り込むことができ、前の座席にいたイタリア人風カップルの濃厚なキスシーンに辟易としながらも無事にヨークに到着することができました。
ヨークはとても穏やかな街で、観光地とはいえ、街全体の雰囲気が日本の郊外都市とすごくよく似ていました。
静かで落ち着いていて街の人も上品で優しい。
英語も同じように穏やかで、ロンドンで感じたような早口でせっかちな聞き取りにくさは全くなかったです。(これは不思議でした)
唯一の欠点は、当日に見つけた宿のご主人が少しあっち系の雰囲気を漂わせていて「君はラッキーだよ。こんな繁忙期(週末の上に観光客が多いシーズンだった)で飛び込みで宿をとれたのだから。しかもシャワールームは君だけの専用だよ」と意味ありげな微笑みで私にウィンクして、部屋とは別のシャワールームの鍵を渡してくれたことでした。
個人経営のホテルで(イギリスではB&Bといいます)、日本で言うと民泊のような宿でしたが、こじんまりしていて部屋の内装もイギリスらしい花柄を基調にした壁紙や紅茶のポットやお茶菓子がサービスで置いたりして、かなり満足でした。
ただそのご主人の含みのある笑顔と、私の部屋だけについているシャワールームというのが妙に引っかかるものがあったので、夜にシャワーを浴びにいくのが正直怖かったのです(苦笑)。
結局は何もなく、心地のよい一晩を過ごすことができましたが・・
その後、列車に乗ってイギリス北部の地域スコットランドに向かい、その首都であるエジンバラで一泊することにしました。
すべての旅程が予定なしアポなしのバックパッキング旅行だったので、観光都市でもあるエジンバラでは宿をなかなかとることができませんでした。
そんな中でやっと見つけた一つの宿。
エジンバラらしく石造りのしっかりしたB&B(個人経営の宿)で、玄関に入るとすぐ目の前に二階にあがる大きな階段が見えて、その横にはいくつかの部屋の扉と、その前を横切る廊下、その奥には階下に降りる階段も見えました。
「エクスキューズミー!」
大きな声でたずねると、二階から一人の初老の女性が顔を覗かせました。
そのルックスはかなりアグレッシブで、まるで映画「千と千尋の神隠し」にでてくる「湯ばあば」を細くしたような、怪しさ満点な雰囲気を漂わせていました。
「滞在できますか?」
英語で聞くと、その初老の女性は早口で何事かを話すと、こっちにこい的な素振りで私を2階に誘ったのです。
(まさか・・誘惑されているのでは!?)
一瞬、危険な香りを感じましたが、海外では何事も経験が大切です。
当時はまだ20代だったので「なんでもこいやぁ!」的な蛮勇も持ち合わせていました。
その女主人らしき人の指示通りに階段を上って部屋に着くと、開いた扉の中にいた「湯ばあば」は再び早口で何事かを説明しながら、それまでしていただろう掃除の続きを始めました。
掃除機で部屋を綺麗にしたり、ベッドメイキングをしながら、何度も何かを説明しています。
しかしそのどれもがスペシャルに早口で、ロンドンっ子の「エー」を「アー」に置き換える独特の母音英語をさらにパワーアップさせた北部訛りのために、私にはたった一語も聞き取ることができませんでした。
(これがスコットランドの方言というやつかな・・)
半ば呆然としながら、おババの早口英語を聞いていると(聞く素振りをしていると)、ようやく最後の言葉を耳にすることができました。
「・・・・パァーナイツ!・・・・・パァーナイツ!」
最初は「はぁ?」と思いましたが、すぐにその前後にお金の単位らしき言葉を言っているのを聞き取ることができ、一瞬で「一晩いくらを”~per nights”と言ってるのか!」と理解することができました。(perは「一つにつき」という意味)
私はすぐに「オーケー!」と答えると、そのおババは初めて笑顔を見せて「+-**/-*-++&%$#"!」と何事かを口にしていました。
もちろんその内容を理解することはできませんでしたが、そのときに開いたおババの前歯がまったくなかったことが、今でもなぜか脳裏にくっきりと焼き付けられています。
こうしてエディンバラの一泊をなんとか確保できたのですが、このおババとのやり取りには後日談があります。
その後で一緒に階段を降りて宿泊料金を支払うときのことです。
前払いということで、トラベラーズチェックはいけるかと聞くと「現金だけだ」というので、お釣りが必要な額のお札を渡したのですが、そのおババは「今お釣りがないから、向かいの店で両替してくる。後で部屋にもっていくから待っていてくれ」的なことを言ってきました(このときは不思議とおババの英語はゆっくりめになっていました。世の中、金か!)
私は頷いて部屋に戻り、荷物を降ろしてベッドに横になって本などを読みながら、おババの到来を待っていました。
しかし夕方から夜にかけても一向に部屋にやってきません。
疲れていたのか、気が付くとそのままベッドで寝ており、気が付くと翌日の朝になっていました。
その日はヨーロッパ大陸に向かうユーロスターが発着するウォーターロー駅に向かうため、朝早くから出発しなければならなかったので、「まあいいか」と諦め、そのまままだ暗いエディンバラの街を歩いて駅に向かうことになったのです。
今思えば、あのおババは確信犯だったのかもしれませんが、それにしても油断もすきもない「エジンバラ版の湯ばあば」でしたね。
実際のイギリス英語は想像以上に難解だった!
他にもヨーロッパ旅行での話は色々とあるのですが、それは今回の主旨ではないのでやめておきます。
何度も言いますが、一番慣れなかったのは「A」や「O」の音をそのままで、しかも鼻腔で伸ばして発音するところです。
洋画や洋楽でアメリカ英語に小さなころから慣れ親しんできた自分にとって、母音系の発音はどちらかといえば「ェ―」と口の中でくぐもらせて「横に伸ばすイメージ」があったのですが、イギリスでは英語の文字そのままに発音しているという印象でした。
言葉でいえば簡単ですが、これを実際の会話の中で連打されると、かなりやっかいでしてね^^;
ひょっとしたら上流階級の英語はもっと聞き取りやすいのかもしれませんね。
私が訪れたのは普通の一般市民が住む街ばかりでしたので^^;
そんな感じでかなり思い出に残った英国滞在での英語体験談でした。
今はあの頃よりも少しはマシになっているので、もう少し聞き取れるでしょうかね?
それとも再びエジンバラのおババにしてやられるのか!(笑)
そのことを確かめるためにも、ぜひまた英国を旅してみたいなと思っています。
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