ジョージ・A・ロメロ監督のオリジナルゾンビ3部作の3作目。
第一作が1968年の「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」で、第二作が前作から10年後の1978年に発表された「ゾンビ」 (Dawn of the Dead )、そして今日取り上げる1985年の「死霊のえじき」(Day of the Dead)である。
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「死霊のえじき」レビュー
ファンの間では2作目に当たる「ゾンビ」が最も人気が高いようだが、この3作目を支持する人も結構いると聞く。
私も2作目「ゾンビ」が最も好きなのだが、ちょうど小学生の頃によく聞いていた洋楽番組でこの映画が取り上げられていたので、印象はこちらのほうが上だ。
当時は娯楽ゾンビ映画の絶頂期で、「デモンズ」「バタリアン」などスピード重視のニュータイプゾンビがゾンビ映画界を席巻していたものである。
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ロメロゾンビ作品で最も有名な二作目ゾンビは、ショッピング・モールを拠点としてゾンビとの戦いと脱走を描いた要塞撤退戦(こういう言葉があるのかどうか分からないが)というべきものだった。
ゾンビファンの間でカリスマのごとく崇められているロメロ監督の作品の中でも、2作目と、この3作目が最も支持を受けているようだが、その理由は・・・・・・実はあまりよくわからない。
個人的見解では、それら2作は単にゾンビとの戦いを描いたというよりも、ゾンビが発生した社会背景、ゾンビを描いたようで実は当時のマイノリティや貧困などを風刺した思想的奥深さ、そして人間同士の葛藤や矛盾、そして弱さをホラーの名のもとに描き切ったことにあるのだろう。
そんな二作目の「ゾンビ」で主人公たちがショッピングセンターから逃げ出して、ヘリで上空から町を見下ろすエンディングから7年後。
今度は全く違う主人公たちが再びゾンビに襲われる羽目になる。 というか、すでにゾンビに包囲されているところから、映画の設定は始まるのである。
今作のゾンビはバブに代表されるように、知能を持つという点が画期的だった。
バブはもちろん犬並みの知能しか示さないのだが、あのまま博士の研究が進めば、ひょっとしたら子供並みの知能にまで引き上げられていたかもしれない。
ローガン博士は、完全にマッドサイエンティストというべき存在で、研究のためには人の命や尊厳など糞喰らえ!的なぶっとんだキャラがなかなか素敵だった。
一見すると、風貌は鉄腕アトムの御茶ノ水博士なのだが、これもロメロ監督が手塚治虫先生にささげた、ある種のオマージュであったと推察するのは、あまりにも突拍子がすぎるだろうか。
主人公の女性科学者サラは典型的な気の強いアメリカキャリアウーマンを演じていた。
しかし冒頭の夢のシーンからわかるように、一見すると強く生きているように見えた彼女の精神状態も、恋人の同僚ミゲル同様、長く続いた逃亡生活と先の見えない地下シェルターでの研究の日々にストレスを抱え、かなり危ない状況に陥っていたのかもしれない。
そんなミゲルは最初から最後まで繊細で気の弱いまま、自らゾンビの大軍の中に、まるで神に己の肉体をささげるがごとくの究極の自己陶酔状態に突入した形で、壮絶な戦死(悶死)を遂げられた。
ゾンビの群れをシェルターに迎え入れ、自らは地下に降りるエレベーターの上でゾンビに食われながら神に祈りを捧げて死んでいくというマッドネスな最期を迎えたミゲルだったが、自分が死ぬだけではなく、地下で避難する軍人や科学者まで巻き添えにするという強烈な置き土産を残して逝かれたのだから、生き残ったほうはたまらない。
いままで俺を苛めてた軍人どもに復讐してやる!
哀れ、軍人たちはミゲルの望みどおりに生きたままゾンビに食われる過酷な運命をたどることとなったのです。
軍人リーダー役のジョセフ・ピラトーは、DVDの特典映像で
「まさかこんな大役に抜擢されるとは思っていなかった。最初はゾンビ役にでもと思っていたよ」
と語っており、リーダー役にキャストされてからは、いかに冷酷な大尉を演じるかに力を注いだといわれている。
さらに「監督にずっとセリフや演技のアピールをしていたんだけど、全く取り上げてもらえなかったんだ。唯一最後の絶命シーンでなんでもいいから、好きなセリフを言いなさいと言われて、あのセリフを思いついたんだよ」と、すっかり有名になった、
「choke on them!」(俺の肉で窒息しやがれ!!)
が生まれたのだった・・・
*生きながら食われた大尉がゾンビどもに放った最後の負け惜しみな御言葉
ゾンビ映画におけるマイノリティの役割
サラとともに逃げた操縦士と無線技士は、それぞれキャリアのある俳優さんのようだ。
アウトサイダーな役柄を演じる彼らは非常に味のある演技をしており、とくに無機質な地下壕の中でトレーラーハウスを改造して、南国風にアレンジした内装の中で酒と音楽を楽しむシーンは、殺伐とした映画の中でも唯一文化の香りが漂っていた。
思えばロメロ監督は配役の中でも黒人に特に重要な意味を持たせていることが多い。 前作、前々作でも黒人俳優が語るセリフや役割は、非常に含蓄のある奥深いものだった。
これはきっと監督がアメリカ社会に対して伝えたいメッセージを彼らマイノリティを通して表現していると思ったほうが、いっぱしの映画レビュアーとしては、かなり文化人的にお株があがる発言なのかもしれないので、あえてそう断言させていただくとする。
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